育成初ベスト9&GG賞のホークス甲斐 初の国際大会に「緊張では済まされない」

ソフトバンク・甲斐拓也【写真:藤浦一都】

Vパレードでは主力の証オープンカーに乗り「今までにない景色」

 己の目を疑うほどの1年だった。今季のプロ野球で急成長を遂げ、頭角を現した選手を挙げれば、必ずその名前が出てくるはずである。

 2年ぶりに日本一の座に立ったソフトバンクの甲斐拓也捕手。育成出身の25歳は今季、初の開幕1軍の座を掴むと、主に東浜巨、千賀滉大といった若い投手たちとコンビを組み、チームの捕手で最多となる103試合に出場した。キャノンとも、バズーカとも称された強肩を武器に、走者を刺すスローイングは圧巻の一言。ひたむきなプレースタイルでファンの心を鷲掴みにした。

 シーズン終了後にはちょっとしたサプライズも待ち受けていた。守備の名手に送られる三井ゴールデングラブ賞を受賞。さらには、パ・リーグのベストナインにも選ばれた。育成出身者でのベストナイン選出は史上初。ダブルでの受賞には甲斐本人もただただ驚くばかり。緊張の面持ちで11月20日に行われた年間表彰式「NPBアワード」の舞台にも立っていた。

 11月26日には福岡市内で「優勝祝賀パレード」が行われ、甲斐は千賀、東浜とともにオープンカーに乗って、ファンの声援を浴びた。パレードでのオープンカー乗車は柳田や今宮、松田、内川、岩嵜、中村晃といった限られたメンバーにだけ与えられる主力の証で「初めて(のオープンカー)で、今までにない景色を見させてもらってありがたいことだなと思っています。それほどの活躍はしていないんですけど…。(東浜と千賀には)特別な思いはありますし、良かったです」と顔を綻ばせた。

アジアCSでは4打数ノーヒット「もっと打てるようになりたい」

 その一方で悔しさと、課題を残すシーズンの終わり方になったのも事実だった。シーズン終了後には、稲葉篤紀新監督が就任した新生・侍ジャパンの一員として「ENEOS アジアプロ野球チャンピオンシップ」に参戦。オーバーエージ枠としての選出だった甲斐は初戦、決勝の2試合でマスクを被った。チームはアジアの頂点に立ったが、甲斐本人のプレーは満足行く出来とはならなかった。

 2試合でノーヒット。バント失敗や、中途半端な形でのセーフティースクイズ失敗など、ミスが重なった。初めて日の丸を背負って戦った国際大会。「緊張では済まされないので。まだまだメンタルの弱さを感じました。簡単に三振してしまって、もっと塁に出ないといけないですし、バントだってもっとキッチリやらないといけない」。己の課題を強く感じる大会になった。

「課題を感じる試合だったなと思いますね。特にバッティングは課題。ああいう感じではダメ。もっと打てるようになりたい。プレッシャーはもちろんありましたし、全国の野球ファンが注目しています。でも、そのプレッシャーの中でもしっかりプレーしないといけないですよね」

 自らの物足りなさを改めて感じさせてくれた侍ジャパンの舞台。この経験が、来季に向けて、甲斐拓也をより成長させてくれるキッカケとなるかもしれない。

(Full-Count編集部)

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