諫早大水害60年 家族愛描く

 死者・行方不明者630人を出した1957年7月の諫早大水害から60年の今年、諫早市で活動する「劇団きんしゃい」(小川供孝(ともたか)座長)は10日、家族愛と再生を描いた演劇「本明川物語『家族-巳(い)・今(こん)・當(とう)』」を市内で上演する。2007年の初演から10年、物語も「10年後の家族の姿」を書き加えた。

 「きんしゃい」は方言で「来てください」の意味。同劇団は1976年に結成、地域色豊かな定期公演は59回目となる。入場者に一握りのコメを募り、アフリカの子どもたちに贈る活動も続けている。

 「本明川物語」は大水害50年目の諫早が舞台。10歳の時、水害で両親を失った主人公の耕平が崩壊の危機にある家族と帰郷し、「ある出来事」を境に家族の絆を取り戻そうとする姿を描いた。

 今回は、初演時のストーリーに同じ家族の「10年後」が加筆。団員約10人は10月から練習に入り、初老になった主人公の動きや子どもたちの成長などを念入りに確認。小川座長(67)は「家族のその後を通して、惨事を風化させず、災害への心構えを伝えたい」と企画の狙いを説明した。

 耕平役の中村一也さん(52)は「副題の『巳・今・當』には、人は願われて生まれ、これからも願われて生きていくという思いを込めた」、少年時代の耕平を演じる河野吾郎さん(13)=県立諫早高付属中1年=は「60年前を実感しながら、今を大切に生きたいと思った」と話す。

 「本明川物語」は10日午後1時、同5時、諫早市民センター(東小路町)で。入場料は高校生以上500円(中学生以下無料)。来場者に一握りのコメも募る。同劇団の会員制交流サイト(SNS)「フェイスブック」で予約できる。

諫早大水害と家族の絆を描いた「本明川物語」の練習に励む「劇団きんしゃい」劇団員たち=諫早市、諫早市民センター

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