糖尿病と闘い日本一周 1型患者、横浜の小島浩一さん

 1型糖尿病患者の小島浩一さん(53)=横浜市磯子区=がヨットの単独航海で日本一周を成し遂げ、横浜港に帰港した。2年5カ月をかけた冒険を通じて「血糖値の管理さえできれば、やりたいことが何でもできる。患者であっても自分らしい生き方に挑戦する勇気を持ってほしい」と、同じ病気と闘う人たちへエールを送るとともに、病気への理解を呼び掛ける。

 1型は血糖値を下げるために必要なホルモン「インスリン」が分泌されなくなる病気。インスリンの注射などによる継続的な治療で健常者と同じように生活できる。生活習慣病に起因する2型とは異なり、自己免疫が原因とされている。

 小島さんは市内の税務署に勤めていた35歳の時に発症。仕事と治療を両立していたが、勤務先から運転免許証の返納を求められるなど病気への理解は得られず、51歳で退職した。

 「病気を理由に社会から受け入れられずに悩む患者は全国に多いはず。自分なりに、理解を広げるためにできることをやってみよう」。25歳からヨットを趣味としていた小島さんは、所有する「SHAKE」(26フィート)で日本一周を決意。2015年6月に横浜港を出港した。

 春から秋にかけて時計回りでゆっくりと航行。途中で嵐に遭い、船体のトラブルにも見舞われたが、1年目の冬季は沖縄、2年目は秋田に係留し、3年越しで航海を続けた。今年は念願だった北海道を一周し、太平洋側を南下した。

 寄港地では同じ病気を抱える患者やヨット仲間たちから「日本一周」の旗に寄せ書きをもらった。各地の地方紙から取材を受け、多くの励ましの声に力が湧いたという。航海の様子を伝える小島さんのフェイスブックやブログを通しても患者同士のつながりが増えていった。

 天候の関係で、予定より2日早い11月24日に、同市磯子区の市ヨット協会の船着き場に帰港。26日のお祝いの会には、同病の仲間たちが東京都内から自転車などで駆け付けた。

 自らも1型患者で、東京山手メディカルセンター(東京都新宿区)糖尿病・内分泌科部長の山下滋雄さんは「自らの病気と折り合いをつけて人生を楽しむ姿を示してくれた小島さんをたたえたい」と笑顔で迎えた。

 小島さんは税理士登録を済ませ、同市都筑区に会計事務所を開設した。1型への誤解や偏見を解消するための“航海”はこれからも続く。

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