南足柄市、小田原市との合併見送り

 南足柄市の加藤修平市長は1日、開会中の市議会12月定例会の本会議で、「小田原市と南足柄市の合併は、するべきではないと判断した」と述べ、2市の合併を見送る考えを表明した。2市は昨年10月に任意協議会(任意協)を設置。合併した場合の財政効果額を試算するなど、県西地域での中心市のあり方を検討してきたが、2市の合併協議は事実上白紙に戻った。

 同日の本会議で、滝本妙子氏(無会派)の一般質問に答えた。

 加藤市長は任意協の設置目的を「県西地域における安定的な行政サービスの提供と、広域行政の連携と強化の実現」と改めて説明。その上で、協議結果について「歳入を増やす方策を示すことができなかった」「県西地域2市8町の連携と強化の対策や成果を示すことができなかった」と指摘し、「任意協の目的を度外視して、合併に向かうことの正当性を見いだすことができない」と述べた。

 この答弁を受け、小田原市の加藤憲一市長は「極めて残念だが、この時点での判断として受け止めざるを得ない」との談話を発表。「判断の理由として挙げられた事柄には、いくつか理解に苦しむ点がある」ともコメントした。

 小田原、南足柄2市は任意協の会合を計9回開き、合併で2市の行政サービスが維持され、合併後10年間の累積で約150億円の財政効果が見込まれることなどを報告、ことし8月に全日程を終えた。終了後、小田原市長は「合併という選択肢を取り得るならば、そこに進むべき」との考えを表明したが、南足柄市長はこれまで自らの判断を示していなかった。◆市民意向踏まえたが…   反対派歓迎も推進派憂慮 南足柄市の加藤修平市長が1日、小田原市との合併を見送る判断を下した。県西部での中心市の在り方を検討するため、2市が設置した任意協議会(任意協)の協議結果が目的を十分に果たしていない点や、「反対」がわずかながらも「賛成」を上回った先の市民意向調査の結果なども踏まえたという。反対派の市民から歓迎の声が上がる半面、推進派は今後の自治体運営を憂慮している。

 「合併は、するべきではない」。1日午後、加藤市長が自らの判断に言及すると、傍聴席を埋めた市民の一部から拍手が起きた。

 見送る理由としてトップが主に挙げたのは、任意協の協議結果だった。

 任意協は、合併後10年間の累積で約150億円の財政効果が見込まれることなどを取りまとめた。だが、加藤市長は「歳出削減のみの効果額」とし、「効果は限定的。将来にわたる安定した財政効果にはなり得ない」と結論付けた。

 そもそも任意協は、南足柄市域を小田原市へ編入合併して誕生する新市を協議の前提とし、南足柄市側には、市民の声が届きにくくなるのではといった懸念が強かった。18歳以上の有権者3700人を対象に、今秋実施した意向調査(回収率61・9%)でも反対が3割弱を占め、さらなる検討を求める声も3割を超えた。

 加藤市長は「(任意協の)途中から議論があたかも合併が目的であるかのような様相を深めたことは、当事者の一人としても残念であり、市民を困惑させ、申し訳なく思う」と謝罪の言葉も口にした。

 反対の署名活動をした市民グループの渡邊紘治代表(74)は「市長の発言を聞き、うるっとした」と安堵(あんど)の表情。「今後は、若い世代らさまざまな立場の市民と一緒に、将来のまちづくりを考えていきたい」と話した。

 一方、厳しい財政事情の南足柄市は今後、聖域なき行財政改革の断行を迫られるのは必至だ。加藤市長は「強い決意と覚悟の下で行財政環境を整えなければならない」と強調、小田原市とも「未来志向で、さらなる連携を図る」と表明したが、周辺自治体のある首長は「長期間にわたって協議したのだから、すべてチャラで、また元通りとなるのか心配」と“破談”による影響を懸念する。

 合併を推進すべきと考え、住民投票の実施を求める請願書を出した押田洋二さん(84)は「厳しい財政状況を市単独でも改善できるというプランも示さず、合併を見送るのは早計」と批判した。

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