【台湾WL】打ち込まれても続投、甲子園準V投手が苦しみのマウンドで得た経験

アジアウィンター・ベースボールリーグに参加している佐藤世那【写真:広尾晃】

苦しいマウンドとなったオリックス佐藤、ベンチから見守る大道監督

 アジアウィンター・ベースボールリーグには、かつて甲子園を沸かせた球児たちも参加している。11月29日には履正社の寺島成輝(ヤクルト)が救援で好投したが、30日には仙台育英の2015年夏の準優勝投手、佐藤世那(オリックス)が先発のマウンドを託された。

 2015年ドラフト6位でオリックスに入団した佐藤は、まだ1軍での登板はないが、2軍では2016年は12試合4勝4敗、防御率5.37の成績で、2017年は12試合2勝1敗、防御率5.00だった。四球は27から18に減ったが、やや伸び悩んでいる感があった。

 30日に対戦した相手は、韓国プロ野球KBO。主力は、KBOの2軍フューチャーリーグに参加している警察野球隊だ。球場は台湾島中南部の斗六球場。テレビ中継はなく、観客もまばらだったが、佐藤世那にとっては実力をアピールする場だった。捕手は同じオリックスの若月健矢。今季は1軍で100試合に出場し、ウエスタン選抜チームでは、ずば抜けた実績のある選手だ。

 立ち上がりは3者凡退。2回も先頭に四球を与えたものの後続を断ち、小気味よい投球ができていた。しかし3回、1死を奪った後、9番打者に四球を与えてから佐藤の投球がおかしくなる。1番打者を四球で歩かせて1死一、二塁とすると、3連続二塁打であっという間に4点を失った。投球が単調になった佐藤の速球を、KBOの打者はためらいなく振り抜いた。

チームによって異なる方針

 続く4回も2死から3連打で1点を失う。走者が出ると投げ急ぐ感じとなり、打者に狙い打ちされた。

 佐藤は5回の先頭打者、4番・洪成昊(斗山ベアーズ)に打球を左翼スタンドへ運ばれる。さらに、続く打者にも安打を許す。

 しかし、ウエスタンの大道典良監督(ソフトバンク)は動かない。笑顔さえ浮かべてマウンドを見つめている。大道監督は、29日のイースタン選抜戦でも、打ち込まれた中村晨(ソフトバンク)を5回途中106球まで投げさせた。

 打ち込まれたから引っ込めるのではなく、マウンドを降りるにしても立ち直るきっかけを掴ませてから降板させるという方針なのだろう。ナインも1球1球「ナイスピッチ」「その調子」と、佐藤を励ます。

 佐藤は6回も1安打されたが無失点に抑え、ナインの拍手に迎えられてベンチに帰った。

 単なる数字ではなく、大事な経験をさせる。これが教育リーグの意義だと言えるだろう。苦しみながらも6回を投げきり、最後は無失点に締めた佐藤はいい経験をしたのではないか。

 対照的にKBOの柳承安監督(警察野球隊)は小刻みな継投をするなど、勝負へのこだわりを見せた。チームによって方針は異なるようだ。

 試合は0-6とリードされたウエスタンが若月の本塁打などで追いかけたが一歩及ばず。4-6でウエスタンが敗れた。

(Full-Count編集部)

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