退位の日決まって

 戦争が終わり、足がつるほど背伸びしながら高度成長を遂げるうち、気付けば本当に背を伸ばしていた。戦後の「昭和」を語るとすれば、こういう言い方もできるだろうか▲ではこの先、「平成」の世を語る言葉とは何だろう。そう思うことが昨今、いくらか増えた気がする。平成が幕を下ろす日、つまり天皇陛下の退位日を2019年4月30日とすることを政府が決めた▲皇太子さまは翌5月1日に新天皇に即位し、改元する。「18年12月退位」や「19年3月退位」も検討されたが、ともに慌ただしい時期として避けられたらしい▲といっても「19年4月末退位」は統一地方選の直後に当たり、ゴールデンウイークにもかかる。気ぜわしい頃に重なるのはきっと変わりなく、31年という歳月を慌ただしく駆け抜けるに違いない「平成」らしいと言えば、そうかもしれない▲公務を通じて「国民と共にある」ことの大切さを思い、だからこそ退位への思いもまた強くなる-こうしたお気持ちの表明を国民の大多数が受け入れ、国会で一代限りとする特例法ができた。国会という場を通じ、国民が道を敷いたと言えないだろうか▲「約200年ぶりの退位」は私たち国民とどこかでつながっている。それ自体、平成史に刻まれ、平成を語る出来事ではないかと、ふと思う。(徹)

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