「責任」と「覚悟」ロッテ1位指名・安田の背筋を伸ばす履正社監督の言葉

入団交渉に臨んだ安田尚憲【写真:沢井史】

夏の大阪大会敗退後から毎日グラウンドへ「プロでやっていける体を」

「こんにちは。このたび千葉ロッテマリーンズから1位指名を受けました安田尚憲です。今日から千葉ロッテマリーンズの一員として自覚を持ってやっていこうと思いますので、よろしくお願いします」

 引き締まった表情、はきはきした語り口調は、今までのそれとは変わらない。約1時間の契約交渉を終え、こう口にした安田。今まで何度も見てきた制服姿でも、もうプロ野球選手の一員になったような佇まいだった。

 ドラフトから約1か月。周囲から多くの祝福の言葉を受けるも、現役選手に混じり、今も練習を続けている。もっと言うと、夏の大阪大会で敗れた7月下旬からほぼ毎日グラウンドにいた。夏休みはU18日本代表に向けての準備もあったが、もちろんそれより先に向けての準備も怠らなかった。

 甲子園を目指していた頃から、恩師の岡田龍生監督から常に言われてきた言葉がある。

「プロを目指すなら、野球が仕事になる。仕事になるということは野球でお金を稼ぐのだから、責任感を持たないといけない」

 その言葉を肝に銘じ、普段の生活態度や授業への姿勢には人一倍気を遣ってきた。生活態度に少しでも驕りがあれば、それは必ず野球にも出てくる。プロは結果がすべての世界。その中に身を置く以上は、今までに増して覚悟が必要だと、この日あらためて痛感した。

「プロ野球選手になると、今まで以上に周囲からの目が増える。これまでもそうだったんですけれど、今まで以上にしっかりとした行動を取っていきたいと思います。これからは周りの手本となるような行動をしていきたいです。子供の頃からの夢は、プロ野球の世界で活躍すること。今はまだスタート地点に立ったばかりなので、具体的な目標はしっかり力をつけてからです」

 すがすがしい表情でこう話したが、ある質問をされた時、語気が強まった。

「2月になるとキャンプが始まりますが、キャンプに向けて楽しみなことはありますか?」

安田が語気を強めて返した言葉とは…

 すると安田はこう返した。

「キャンプに関しては“楽しみ”という表現は良くないのかな…と思います。プロは厳しい世界なので、それなりの覚悟を持ってキャンプに入っていきたいです」

 1位指名を受けた18歳でも、プロ野球の世界は甘くないということは重々覚悟しているつもりだ。これからは高校時代のように単にレギュラーを争うだけではなく、一流のプロ野球選手になり、結果を残していかないといけない。

 チームを代表する選手になり、ゆくゆくはリーグを代表する、そして日本を代表する選手へ…と、夢は膨らむ。だが、今はまず足元をしっかり見つることだけに集中する。

「1軍に上がりたいとかホームランを打ちたいとか、いろいろな目標はありますが、まずはプロでやっていける体を作ります。プロはシーズンが長いので怪我をしない体を作りたいです。プロと高校野球ではパワーとスピードが全然違うので…。理想としては、松井秀喜さんのように周りにも気を遣える、人から尊敬されるような選手になりたいです。結果を残すことがすべての世界ですが、野球以外の部分でも評価してもらえるようになりたいです」

 岡田監督からは「ホームランバッターを目指して欲しい」という言葉もあった。自身もそこはしっかりアピールポイントとして受け止め、腕を磨くつもりだ。

 年明けには生まれ育った大阪を離れ、初めての寮生活、そして新天地・千葉での生活が始まる。

「ロッテのファンの方はすごく熱いと聞いているので、その熱さに負けない戦いができれば」

 高校通算64本塁打を誇る世代屈指のスラッガーは、さらなるステージでも本領を発揮し、次は千葉の星になる。

(Full-Count編集部)

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