175センチ以下、投球フォームに共通点 今季輝いた新顔「左キラー」たち

ソフトバンク・嘉弥真【写真:荒川祐史】

今季輝いた対左打者のスペシャリストたち

 現在の日本球界には、左の好打者が増えていると言われる。今季首位打者と最多安打の2冠に輝いた埼玉西武の秋山翔吾外野手や、3年連続の最高出塁率をマークした柳田悠岐外野手も左打者だ。各球団は、多くの場合、俊足と卓越したバットコントロールを持つ彼らを抑えるため、要所で対左のスペシャリストを効果的に登板させてきた。そこでここでは、今季輝いた新顔の「左キラー」に注目していきたい。

〇嘉弥真新也投手(福岡ソフトバンク)
対左成績:99被打数23被安打1被本塁打37奪三振 被打率.232

 今季自己最多となる58試合に登板し、チームの2年ぶりとなる日本一に大きく貢献した。昨秋のキャンプからサイドスローへ転向したばかりだが、「ポスト森福」の期待以上の働きを見せ、層の厚い福岡ソフトバンクの中継ぎ陣においても、確固たる地位を築いている。投球の半分以上を占めるスライダーを内外に投げ分け、高い奪三振能力を誇った。

〇野田昇吾投手(埼玉西武)
対左成績:64被打数9被安打0被本塁打10奪三振 被打率.141

 シーズンの後半から、貴重な左の中継ぎとしてチームに貢献。現役投手の中では最低身長となる167センチながら、最速147キロの直球を勢い良く投げ込み、打者を圧倒。直球の被打率は対右を含めても1割台前半と抜群の成績だった。「ENEOSアジアプロ野球チャンピオンシップ2017」では日本代表にも選出され、自身初の大舞台で結果を残している。

〇高梨雄平投手(楽天) 
対左成績:83被打数11被安打0被本塁打31奪三振 被打率.133

 2016年のドラフトで、87人中85番目の指名を受けたルーキーながら、サイドスローから投じる曲がりの大きいスライダーを武器に、46試合を投げて驚異の防御率1.03。チームの4年ぶりとなるクライマックスシリーズ進出に大きく貢献し、ファーストステージ、ファイナルステージでともに防御率0.00を叩き出した。得意のスライダーは、対右も含めて何と被打率.090。67被打数6被安打28奪三振と、数多の強打者たちをきりきり舞いさせた。

数々の伝説を打ち立てた「元祖左キラー」

〇大山暁史投手(オリックス)
対左成績:64被打数15被安打0被本塁打21奪三振 被打率.234
〇公文克彦投手(北海道日本ハム)
対左成績:57被打数14被安打1被本塁打18奪三振 被打率.246
〇松永昂大投手(千葉ロッテ)
対左成績:82被打数21被安打0被本塁打21奪三振 被打率.256

 上記3選手も貴重な左の中継ぎとして、左打者を相手に安定した投球を見せた。大山、公文は今季から登板数を増やしているため、来季も計算できる戦力となるだろう。松永は今季の対左の被打率.256だが、昨季は.197と「左キラー」として抜群の働きを披露しており、復調に期待したい。

 また、ここまで挙げてきた「左キラー」はある共通点を持っている。サイドスローあるいはサイド気味のスリークォーターであること、身長が175センチ以下と野球選手としては小柄であること。この特徴が元祖「左キラー」故・永射保氏と重なるのは、決して偶然ではないだろう。永射氏は、「左キラー」の先駆けとも言われる左のサイドスロー。広岡達朗監督時代の西武でワンポイントとして活躍し、数々の伝説を打ち立てた。

 今季、パ・リーグの打撃部門の上位に名を連ねている選手の中にも、左打者は多い。先に挙げた秋山、柳田以外にも、源田壮亮内野手(埼玉西武)や西川遥輝外野手(北海道日本ハム)、銀次内野手(楽天)、茂木栄五郎内野手(楽天)などだ。主軸である彼らを抑えるということは、自身のチームに流れを引き寄せる役割を果たすということだろう。その希少性を存分に駆使して、大きな大きな1死を奪う「左キラー」に、来季以降も注目してほしい。

(「パ・リーグ インサイト」藤原彬)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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