【MLB】松井秀喜氏の米殿堂入りを「真剣に考慮すべき」 米名物コラムニストが主張

米国野球殿堂入り候補者に名を連ねた松井秀喜氏【写真:Getty Images】

今年初めて殿堂候補入りした松井氏、選出は極めて厳しい状況も…

 ヤンキースで2009年のワールドシリーズMVPに輝いた松井秀喜氏について、米国の名物コラムニストが「殿堂入りを真剣に考慮すべき」と訴えている。松井氏の米国での野球殿堂入りは極めて厳しいと見られているが、日本時代を含めた全ての実績を見るべきだと主張。松井氏が日米の野球史を語る上でいかに重要な存在であったかを強調している。

 地元紙「ニューヨーク・ポスト」で「野球殿堂改革が松井秀喜を助ける」と題したコラムを執筆したのは、辛口で知られる同紙の名物コラムニスト、ジョエル・シャーマン氏だ。書き出しでは「松井秀喜は殿堂入りを真剣に考慮されるべきだ」と言い切っている。

 松井氏は日本での10年間で通算打率.304、332本塁打、889打点という圧倒的な成績を残した後、ヤンキースに移籍。初年度から3年連続100打点以上を記録するなど、10年間4チームで通算打率.282、175本塁打、760打点をマークした。特に、7年間在籍したヤンキースでは2009年のワールドシリーズでMVPに輝き、世界一に貢献するなど印象的な活躍を見せた。日米通算では507本塁打を記録している。

 引退から5年がたち、殿堂入りの有資格者となったことで、11月に米国野球殿堂と米国野球記者協会(BBWAA)が発表した2018年の殿堂入り候補者のリストには初めて名前が載った。もっとも、メジャーのみでの実績では殿堂入り選手と大きな差があり、実際に選出される可能性は極めて低いと見られている。日本人メジャーリーガーのパイオニアとして球史に名を残す野茂英雄氏でさえも、翌年の候補者リストに残るための条件となる5%の票を獲得できず(1.1%)、1年で名前がなくなっていた。

 ただ、シャーマン記者は「彼(松井氏)が選出されれば、票の扱いについて絶えず増え続ける不和と対立を和らげる道が見いだされるかもしれない」と指摘。さらに「その人間が試合に出ていた期間全体を考慮する『野球人生』のカテゴリを作るべきだと私は長年主張してきた。それが唯一のカテゴリで、一度候補となれば落ちることなく、そのためベテランズ委員会がすっかり廃れる、なんてことを今私は考えている」と続けている。

松井氏の日米での実績を評価「柔軟に考えるべき時がきている」

 つまり、メジャーでの実績だけでなく、日本での実績も考慮するべきだというのだ。殿堂入りしていないダスティ・ベイカー、ルー・ピネラといった名前も列挙。選手、監督それぞれの成績では殿堂入りに届かないものの、その両方を合わせれば十分にクーパーズタウン行きに値する実績を残してきたのではないかと、言及している。

「松井の野球人生を考えてみよう。彼は日本とMLBで500本塁打以上を放ち、日本の球史で最も偉大な選手の一員とみられている。彼は渡米し、同じ頻度で本塁打を放ちはしなかったものの、5000以上の打席でMLBキャリア通算OPS+が118と並外れた選手だったため、彼の海外での成績は真剣に受け止められるべきだ」

 メジャーでは成績が落ちたものの、特筆すべき数値もあり、日本時代に残した実績も重視すべきだという。また、成績以外の部分を評価されて殿堂入りする人間も増えてきているとも指摘。シャーマン記者は 「腹を割って話そう。殿堂はすでに記者投票を通してないにも関わらず、厳格な『MLB経験が最短10年』から範囲を広げ、人々を殿堂に入れている。ネグロリーグ出身選手は正当にまつられている。審判を含む貢献者もだ。ちょっと待て、審判のキャリア全体は考慮するのに、松井秀喜やダスティ・ベイカーのそれは考慮しないというのか?」と率直に綴っている。

 松井氏の殿堂入りが米国で真剣に検討されるようなことがあれば、歴史が変わる。記事では「柔軟に考えるべき時がきている。この問題を排除することはできず、国際的な競技であることを無視することはできないと認識する時が。例えばヒューストンのユリエスキ・グリエルは松井と似たキャリアの最中にある。オーナーたちが有色人種の選手をメジャーから排除していたのと同じようにMLBに来ることを国から禁止されているキューバで、彼が最高の打者だったであろうことを忘れるべきだろうか?」とも訴えている。

 日本人選手では、27歳で渡米しながら、今季までに通算3080安打、MVPが1度、首位打者2度、10年連続ゴールドグラブ賞など輝かしい実績を残してきたイチロー外野手が、有資格1年目での殿堂入りが確実と見られている。突き抜けた存在であるイチローはあまりにも特殊な例で、今後、その他の日本人選手が米国野球殿堂入りを果すことはないかもしれない。

 ただ、名物コラムニストが松井氏も殿堂入りを考慮するに値すると訴えているように、日本人選手への見方も変わってきているようだ。「全てを解決するものではないだろう。しかし、小さな前進は停滞より良い」。シャーマン記者の主張は、どれだけの人間の心に響くだろうか。

(Full-Count編集部)

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