【佐藤琢磨インディ500】勝ちたい、ではなく「勝つ」と確信した理由

2017年5月、第101回インディ500を制した佐藤琢磨。12月3日には、もてぎのオーバルコースを優勝したマシンで走り、凱旋ランを披露した。日本人ドライバーとして初の快挙について、琢磨自身が何度も語っているが、聞くたびに新しい発見がある。偉業の裏側に何があったのか、あらためて振り返ってみよう。
 
2016年インディ500では、ワンツーフィニッシュを果たしたアンドレッティ・オートスポーツ。琢磨は16年の年末に強豪チームへの加入が正式に決まり、その時点から「インディアナポリスが最大のチャンスになる」と考えていた。
 
「勝ちたい、とか勝てるかもしれない、ではなく勝つつもりだった」と琢磨は明言する。KVレーシング時代にもコンビを組んでいたエンジニアのギャレット・マザーセッドの存在も大きかった。
 
インディ500に向けて、勝てるクルマを作り込んでいく過程は、どのチームでも大きな違いはない。しかし、チームのリソースが充実しているほど精度が高まり、テストプログラムも変わってくる。
 
「アンドレッティ・オートスポーツでは、とてもスムーズに進んでいった」と、琢磨は振り返る。
 
2017年はF1からフェルナンド・アロンソの合流が決まり、アンドレッティ・オートスポーツは6台の陣容に。まずインディアナポリスのスーパースピードウェイに持ち込むクルマのレベルが高く、そこから1台ずつ細かくプログラムを分けてセットアップを進めていく。そして初日からグループランを行ない、「トラフィック」内での挙動を確認する。

予選でも本気でポールポジションを狙いにいき、ターン2で壁を擦るアタックを見せた琢磨。結果は自己ベストの4番手となり、2列目から決勝を戦うことになった。
 
琢磨のクルマは、チームメイトで2016年ウイナーであるアレクサンダー・ロッシやアロンソと比べると、重いダウンフォースを選択。スティント後半にタイヤが磨耗した状態でも攻められることを重視した。レース終盤がニュータイヤでの勝負になる可能性は低いことを考えると、その考えは理にかなっていた。
 
すべてを緻密に組み立てながら、レースではタイヤ交換の失敗で順位を落としたため、予定を変更した部分もあった。しかし最終的には、すべてがプラスに働いたと言える。
 
琢磨は2018年、かつて在籍したレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングへの移籍が決まっている。アンドレッティ・オートスポーツと、まったく同じアプローチを再現できるとは限らないが、すでに勝利への道は体得している。
 
「連覇しよう!」という琢磨の言葉には、これまでに得た経験からの確信があるのかもしれない。
  
 

 
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