読解力は今

 頭の体操をお一つ。中学校の教科書にあるという。「幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた」。さて、意味は次の文と同じでしょうか? 「1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた」▲幕府は命じた側だから二つは同じ意味ではないのだが、国立情報学研究所の調査によると「同じ」と誤って答えた中学生は43%に上ったという。高校生でも誤答は28%▲つい慌てて答えちゃった-という生徒さんもいるのだろうが、それを差っ引いても高い数字ではある。主語と述語の関係といった文章の基本的な構造をよく理解できていない中高生が多い、と研究所はみている▲先日の本紙に載ったこの記事で、研究所の教授の話にぎょっとする。人工知能(AI)の進歩は著しく「将来、仕事を奪われないためにも読解力の底上げに支援を」と▲AIの方がよっぽど話が分かる、話が通じる-となればジョークのような、悪夢のような未来図である。読解力が全てではないにせよ、何か手だてを要するに違いない▲もう一つ、四字熟語を完成させる問題を。「用意○○」。AIとの競争時代に入ると思えば「用意ドン」の心境だが、読み解く力の向上は一朝一夕にはいくまい。用意周到こそが肝要だろう。(徹)

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