【伊・製鉄プラント会社「ダニエリ」、日本法人開設から10年】東鉄向けなど受注拡大 アントネロ代表「日本は成長市場、規模拡張へ」

 イタリアの製鉄プラント会社、ダニエリの日本法人、ダニエリ・エンジニアリング・ジャパン(本社・横浜市、略称・DEJ)がきょう5日に設立から10年を迎えた。同社は三菱重工業系のプライメタルズ・テクノロジーズ(PT)、ドイツのSMSと並ぶ世界の製鉄プラント大手3強の一角とされる。日本での歩みと、今後の戦略を取材した。(黒澤 広之)

 「ダニエリの強みは斬新なビジョンと新技術。一方、日本の鉄鋼メーカーは賢く、我々のプレミアムを理解している。共に新しいアイデアにトライするDNAがあり、さらにパートナー関係を深める余地があると思っている」。来日したDEJのモルデグリア・アントネロ代表はこう語る。

 アントネロ氏はイタリアのブットリオに本社を置くダニエリ・オートメーションの社長兼CEOを務めるグループ最高幹部の一人。昨年にDEJ発足時からの代表だった佐藤良氏に代わり日本法人のトップも兼ねている。世界中に出張する中で、日本も頻繁に訪れており「コミュニケーションは容易に取れる時代。日本とイタリアの間に距離はない」。日本法人の代表として積極的にトップセールスをかけている。

 ダニエリが日本で納めた最大の設備は、東京製鉄・田原工場の直流EBT式300トン電炉だ。ダニエリが日本法人を設立する契機ともなった大型案件で、東鉄向けには岡山工場で今まさに立ち上げ中の連続鋳造機(CC)も手掛けている。新日鉄住金やトピー工業などグループ企業、特殊鋼メーカーでも実績を拡げている。

 今後の戦略も強気だ。アントネロ代表は「日本は製鉄プラントの成長市場」と述べ「優秀な人材の採用を増やし、将来的には(日本法人を)50人規模の会社にしたい」と照準を掲げる。合弁事業での展開にも意欲を見せている。

 自身がトップを務める年商500億円規模のオートメーション部門での新技術も武器になる。自動化や高効率、ビックデータの活用による予測やメンテナンスコスト削減に寄与するシステムを日本でも提案していく考えだ。

 ダニエリは1914年に創業し、電炉を皮切りに薄スラブ連続鋳造機やダウンコイラーなど多くのプラントで先駆的な成果を出してきた。

 近年は能力増強が盛んなベトナムで実績を挙げており、越大手のホアファット・グループからは2015年に完全子会社化したオランダの高炉プラント会社、ダニエリ・コーラスを含め、高炉や薄スラブ連鋳のQSPなど薄板類の設備一式を受注している。

 アントネロ代表は「世界の鉄鋼需要の7割は建材。世界で毎年生産される約16億トンのうち30%はリサイクルされる。この分野をフルサポートしていく」と強調。鉄鋼だけでなく需要が伸びているアルミ業界向けのプラントも商機だと指摘する。

 10年前の日本法人は横浜駅外れの小さな事務所でスタートした。今では横浜港や京浜工業地帯を一望できるみなとみらいのランドマークタワーに居を構える。地方への長期出張者を含め現在11人の陣容は果たして今後どう増えていくだろうか。

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