ミシュラン、今のF1への復帰に関心なし。「タイヤメーカーにとってのメリットが少ない」

 かつてF1タイヤサプライヤーを務めたミシュランは、今のところグランプリレースへの復帰に関心はないと、モータースポーツディレクターのパスカル・クワノンが語った。

 ミシュランは1977年から1984年、2001年から2006年に公式タイヤサプライヤーとしてF1に参戦した経験を持ち、F1に初めてラジアルタイヤを導入したことでも知られる。2006年を最後にF1から遠ざかっているミシュランは、昨年の時点では復帰に意欲をみせていたものの、タイヤの性能基準やスペックに関してF1との間で合意に至らず、現在はWRC、WEC、フォーミュラE、MotoGPなどで活動している。

 ミシュランのモータースポーツ責任者であるクワノンは、耐久レースにしてもフォーミュラEにしても、レースを通じて得た新たな技術的知見を市販車向けに転用できるメリットがあるとしている。

 クワノンは、ミシュランにとってレース活動は自社の市販車向けタイヤ製品にとって有益であるべきだが、F1に参戦してもそれが得られないのだと強調する。

「ミシュランは、常にチャレンジすべき目標を持ってレースに臨みたいと考えている。当然、競争する者には誰でもチャレンジ目標がある」とクワノンはフォーミュラE開幕戦が開催された香港で語った。

「たとえばFIAやフォーミュラEとの協議を通じて、タイヤメーカーにとってはより困難な開発を要する新ルールを導入してもらうとする。そうすれば、我々自身のチャレンジがそこに生まれる。それこそが我々の望むことだ」

「我々にとってチャレンジのない、あるいは各チームのマシンにとって意味あるチャレンジがないレースには参加したくないのだ。チャレンジがあるのなら、我々だけの独占供給だとしても、それで構わない。フォーミュラEが良い例だ」

 F1で求められるコンパウンドレンジの幅広さや寿命の短さは、ミシュランの製品開発計画や目的とは折り合っていないという。

「現在のF1とは、正直に言えば、18インチタイヤ、小さなサイドウォールに関して話をした。街中で見かけるサイズだ。もしそのタイヤをレースで使って技術的な知見が得られれば、すぐに転用できる」
 
「大きなサイドウォールのタイヤからは我々にとって有用な知見が得られない。多額の資金を投じて7周から10周ごとに交換するタイヤを開発し、果たして毎日乗る市販車に本当に転用できる技術が得られるのか」
 
「私はF1が大好きだ。だが、純粋にタイヤの技術という意味では、F1が我々にとって今日最も有益なシリーズとは言えないだろう」

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