フレンチレストラン『サンパティック』の常連の女性が夜遅く帰宅途中、まだキッチンに明かりが灯っているのを見てドアを開けてみると、香ばしい匂いが・・・。それは、オーナー・シェフの黒岩さんが翌日のランチ用に焼き上げたばかりのイチジクのタルトからのものでした。
「テイクアウトしたい!」という常連客の言葉に、「明日のランチ用なんですよ」と説明したものの、彼女はイチジクのタルトを丸ごと一台お買い上げ。シェフは翌朝、嬉々としていつもより早くキッチンに入ってタルトを焼くことに・・・。
フランス料理をリーズナブルに味わえる、このフレンドリーなお店の最寄駅、西武新宿線・新井薬師前は、高田馬場からわずか3つ目。でも、駅の周辺や西武新宿線沿線の住民以外で『サンパティック』の存在を知っている人は、ほとんどいないようです。
しかし、地元民にとっては、近所で食事をするという日常と、フランス料理を食べるという非日常の両方を楽しませてくれる貴重なレストランとなっています。
何よりもここを特別な場所にしているのは、広尾の名店『アラジン』で働き、シェフとして3年間にわたり丸の内の『ミクニ』で料理を任されていた黒岩シェフの人柄と技術です。
黒岩シェフはまた、フランスに2年間滞在した経験もあり、ブルゴーニュのジュヴレ・シャンベルタンにあった『レ・ミレジム』とパリの『ヴィヴァロワ』という2つのミシュラン星つきのレストランで働いたことがあります。ちなみに、『サンパティック』で、アミューズ・ブーシュとして供されるピンク色の赤パプリカのムースは、『ヴィヴァロワ』の伝説的なシェフ クロード・ペロー氏へのオマージュだそうです。
3年前に『サンパティック』がオープンしてからしばらくは、「フランス料理は高いだけで、お腹が一杯にならない」との地元の人たちの考えを変えてもらおうと奮闘したという黒岩シェフですが、今では、常連の人たちがワガママを言える存在になっています。「オマール海老を食べたい」と言えば、新鮮なものを仕入れて、サフランのソースに合わせて食べさせてくれ、「和牛が食べたい」と言う人には、北海道から黒毛和牛を取り寄せてグリルしてくれます。
そして、ワインを持ち込む人が多いのも『サンパティック』の特徴。常連客が持ってきたブルゴーニュやボルドーの高級ワインを、シェフも飲ませてもらって大感激といったことも少なくないそうです。
良心的な価格で、お腹いっぱい“王道のフランス料理”を楽しめる『サンパティック』。地元の人々に“独占”させておくのはもったいないと思いませんか?
サンパティック
中野区上高田2-54-8 アイボリーファーストビル 1F
03-5942-5299