「オランダ村」復活

 17世紀の東インド会社の商船を復元した、その名もプリンス・ウィレムという木造帆船があった。14億円かけてオランダの造船所で建造されたこの“シンボル”を記憶にとどめる方も少なくないだろう▲1983年、今の西海市西彼町の国道と大村湾に面する地に、長崎オランダ村は風車と売店だけで開業した。のちに巨大帆船が登場し、長崎とゆかりの深いオランダの街並みが整えられて…▲テーマパークの先駆けとして「東の東京ディズニーランド、西のオランダ村」とまで呼ばれた。最盛期には年に200万人を集めたが、やがて客足は遠のき、惜しまれつつ2001年に閉園▲と、つい昔日の記憶と記録をたどってしまう。観光施設「ポートホールン長崎」が「長崎オランダ村」に名称を変え、16年ぶりにその名が復活した。知名度を生かし集客につなげるという▲飲食店などを展開してきたポートホールンの経営は振るわず。これからは文化、芸術、自然の調和をテーマに掲げ、既存施設をミニシアターにして500円から映画を楽しめたりするらしい▲昔のオランダ村はテーマパークブームや好況で順風満帆の航海をした。そんな風もなく巨大な帆もない新オランダ村は人力で-人の知恵と意欲と応援でこぐ船だろう。前途遼遠の(りょうえん)航海の、いつか洋々たることを。(徹)

© 株式会社長崎新聞社