【新日鉄住金グループ企業の〝今〟(10)】〈共英製鋼〉グローバル展開で成長戦略推進 ベトナム港湾事業もスタートへ

 異形棒鋼最大手の共英製鋼は、普通鋼電炉のグローバル展開の先駆的メーカー。国内で異形棒鋼のリーディング・カンパニーとしての地位を確保するとともに、海外展開で成長戦略を推進している。

 国内では枚方(大阪府枚方市)、山口(山口県山陽小野田市)、名古屋(愛知県海部郡)の3事業所と、子会社の関東スチール(茨城県土浦市)の4拠点で異形棒鋼を年間約140万トン(2016年度)生産。

 粗鋼生産は共英、関東スチール合計165万トン(16年度)で、普通鋼電炉3位、鉄鋼全体で8位(共英単独)。

 海外ではベトナム南部のビナ・キョウエイ・スチール(VKS)社、北部のキョウエイ・スチール・ベトナム(KSVC)社、昨年12月に買収した米国テキサス州のビントン・スチール(VS)社を持ち、異形棒鋼、線材などを生産。日本を含むグローバル生産量は今17年度で約300万トンに達する。ベトナム南部では、港湾事業チー・バイ・インターナショナル・ポート(TVP)社も年内に動きだす。

 関西地区の拠点・枚方事業所は共英にとって初の製鋼圧延一貫工場。細物サイズの異形棒鋼を主力とし、その品質や納期対応力には定評がある。

 国内の普通鋼電炉で唯一24時間操業の山口事業所は、多品種生産が強み。異形棒鋼を中国地区や九州、四国に出荷。山形鋼、平鋼は全国出荷。グレーチング向けIバーはトップシェア。

 1988年には電気炉溶融技術を活用して医療廃棄物・産業廃棄物を処理する環境リサイクル事業を開始。現在は全拠点に拡大し、国内鉄鋼事業、海外鉄鋼事業に次ぐ成長の3本柱の一つになった。

 中部地区の拠点・名古屋事業所は、異形棒鋼に加えてネジ節鉄筋を生産。15年7月には高炉メーカー品だった超高強度ネジ節鉄筋「USD685B」・D51ミリ径の生産に成功。高さ125メートルと高速道路橋で最も高い東海北陸自動車道・鷲見橋の橋脚向けに出荷した。グループの新製品・新技術開発の拠点「開発センター」も併設する。

 関東地区では、96年に設立した関東スチールが、細物専業メーカーとして品質面・営業面で顧客満足度向上に努める。

 海外事業は現在、ベトナムと米国で展開。

 ベトナム南部で96年に営業生産を開始したVKS社は、15年に電炉製鋼圧延一貫体制となり、同国南部や近隣国に鉄筋・線材・山形鋼を出荷している。北部のKSVC社も電炉製鋼圧延一貫工場の建設を決定。19年に圧延、20年に製鋼工場が稼働予定で、年産能力は30万トンから80万トンに拡充される。

 今年11月には、北部の電炉、ベトナム・イタリー・スチール(VIS)社の株式を親会社の鉄鋼商社、タイ・フン社から約20%取得した。競合が激しい北部市場での存在感を高める狙いだ。

 港湾事業のTVP社は年内に操業を開始、来年1月竣工式の予定。南部VKS社に至近で、同社向けスクラップの荷揚げや製品出荷を担う。好立地の多目的港で、将来は他社の鉄鋼製品や一般貨物の取り扱いも狙う。

 米国のVS社は、異形棒鋼と鉄球を生産。米国進出は73年に日本鉄鋼メーカー初上陸となったオーバン・スチール(79年譲渡)以降3回目。「小さな工場だが、ここを橋頭堡に事業拡大していく」(森社長)と米国で戦略的展開を拡充する意向だ。(このシリーズは毎週水曜日に掲載します)

企業概要

 ▽本社=大阪市北区堂島浜

 ▽資本金=185億1600万円(新日鉄住金の出資比率25・82%)

 ▽社長=森光廣

 ▽売上高=1459億9100万円(17年3月期)

 ▽主力事業=普通鋼電炉(異形棒鋼、一般形鋼、平鋼、鋼片)

 ▽従業員=2341人(連結)

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