厳しい現実に直面する選手も…過去5年で最多8人獲得の巨人、FA補強の結果は?

先日のアジア大会ではチャイニーズ・タイペイ代表として出場した陽【写真:Getty Images】

今季は7選手がFA権を行使、増井のオリックス、大和のDeNA入りも決定

 すっかりシーズンオフとなったプロ野球界。この師走の話題となると、ポスティングによるメジャー挑戦を表明した日本ハム・大谷翔平の行方であったり、選手の契約更改、各球団の補強、そしてFA権を行使した選手たちの動向といったところになるだろう。ここで注目したいのは、そのFA権を行使した選手たちだ。

 おさらいすると、「国内FA権」は国内球団と自由に契約できる選手の権利。取得には、2006年以前に入団した選手は8年(通算1160日)、2007年以降にドラフト入団した高校生は8年、大学生・社会人は7年(通算1015日)の1軍登録日数が必要となる。国内外問わず他球団と契約できる海外FA権は全選手9年(通算1305日)を要すると決められている。

 今オフはソフトバンクの鶴岡慎也捕手、オリックスの平野佳寿投手、日本ハムの大野奨太捕手、増井浩俊投手、ロッテの涌井秀章投手、西武の野上亮磨投手、阪神の大和内野手と7人の選手がFA権を行使した。このうち平野佳寿と涌井秀章はメジャー挑戦を前提とした権利行使で、残る5人は国内他球団への移籍となる見込み。すでに増井がオリックス、大和がDeNA、そして野上が巨人へと移籍することが決定した。

 長らくチームの一線級で活躍をしてきた選手の権利と言えるFA権。ほとんどの場合が、好条件を提示されるなどして三顧の礼で新天地に迎え入れられる。では、移籍した後、その条件に見合うだけの活躍を見せているのか? それを振り返ってみたい。

過去5年で巨人は12球団最多の8選手を獲得

 2012年から2016年の過去5年間でFA権を行使し、国内他球団に移籍した選手は全部で25人いる(宣言残留、MLB挑戦は除く)。同一リーグでの移籍は14選手、セ・リーグ→パ・リーグは3選手、パ・リーグ→セ・リーグが8選手となっており、巨人への移籍は12球団の中で最も多い8選手となっている。

 そこで、移籍先をセ・リーグ(巨人を除く)、パ・リーグ、巨人の3回に分けて、FA権を行使して国内他球団へ移籍した選手の移籍前後の成績を見てみよう。まず今回は巨人へと移籍した選手たちだ。(※金額は推定)

【2012年】
○FAによる獲得選手なし

【2013年】
○片岡治大(西武)今季限りで現役引退
2012(西):52試合204打数46安打2本塁打19打点8盗塁 .225
2013(西):72試合259打数75安打4本塁打32打点9盗塁 .290
2014(巨):126試合429打数108安打6本塁打32打点24盗塁 .252
2015(巨):113試合348打数85安打10本塁打36打点21盗塁 .244
2016(巨):32試合81打数18安打2本塁打4打点4盗塁 .222
2017(巨):1軍出場無し

 2013年オフに権利を行使し、総額3億5000万円の2年契約で移籍。1年目の2014年は126試合に出場し規定打席にも到達したが、打率.252と振るわなかった。2年目の2015年に通算300盗塁を達成したが、怪我や不調で前年から数字を落とすことに。3年目以降も故障に悩まされ、今季は1軍出場のないまま、今季限りで現役を引退。2軍内野守備走塁コーチに就任する。

○大竹寛(広島)
2012(広):24試合11勝5敗 144回2/3 144安打85奪三振 2.36
2013(広):25試合10勝10敗 163回 152安打100奪三振 3.37
2014(巨):22試合9勝6敗 129回 127安打79奪三振 3.98
2015(巨):11試合3勝4敗 56回 56安打35奪三振 3.21
2016(巨):17試合6勝6敗 91回1/3 91安打71奪三振 3.55
2017(巨):13試合4勝4敗 69回 75安打50奪三振 5.09

 2年連続2桁勝利を達成した2013年のオフに3年総額5億円で巨人へ移籍。1年目の2014年は、9月に右肩を痛めて離脱したものの、22試合に投げて9勝をマーク。だが、2年目は不振に喘ぎ、わずか3勝とまり。2016年も怪我で出遅れて6勝に終わった。今季も4勝にとどまり、移籍後4年で2桁勝利から遠ざかっている。

金城は移籍1年で引退、相川も今季でユニホームを脱ぐことに

【2014年】
○金城龍彦(DeNA)2015年オフに現役引退
2013年(De):118試合306打数89安打6本塁打36打点 .291
2014年(De):90試合160打数32安打0本塁打11打点 .200
2015年(巨):36試合90打数21安打1本塁打10打点 .233

 2014年オフに海外FA権を行使して巨人へ。開幕戦からスタメン起用されるも、6月に左前腕部外側部損傷の負傷を負い、その後は2軍暮らしが続いた。1軍での出場は36試合止まりで、2015年シーズン限りでの現役引退を決断。移籍わずか1年でユニホームを脱ぐことになった。現在、巨人の2軍外野守備走塁コーチを務めている。

○相川亮二(ヤクルト)今季限りで現役引退
2013年(ヤ):66試合219打数61安打6本塁打30打点 .279
2014年(ヤ):58試合192打数48安打2本塁打21打点 .250
2015年(巨):40試合99打数31安打4本塁打17打点 .313
2016年(巨):37試合41打数10安打0本塁打4打点 .244
2017年(巨):29試合38打数6安打0本塁打3打点 .158

 金城と同時期にヤクルトから権利を行使して巨人へ移籍。開幕戦で移籍後初スタメンするも、開幕後すぐに肉離れで離脱。夏場には左手首の骨折と怪我に泣き、66試合の出場にとどまった。2年目の2016年には小林誠司が正捕手として起用されることが増え、出番が減っていった。今季も29試合の出場に終わり、今季限りで現役を引退した。

【2015年】
○脇谷亮太(西武)
2014(西):96試合205打数54安打2本塁打20打点 .263
2015(西):118試合235打数69安打3本塁打22打点 .294
2016(巨):54試合108打数17安打1本塁打7打点 .157
2017(巨):52試合64打数16安打0本塁打0打点 .250

 2013年オフに片岡治大の人的補償として巨人から西武に移籍し、2015年のオフに権利を行使して古巣に復帰した。だが、2016年は54試合出場に終わり、打率.157と結果を残せず。今季も52試合と出番が減り、厳しい状況となっている。

今季は史上初のFA3選手獲得も、3選手ともに期待に応えられず

【2016年】
○陽岱鋼(日本ハム)
2015(日):86試合352打数91安打7本塁打36打点14盗塁 .259
2016(日):130試合495打数145安打14本塁打61打点5盗塁 .293
2017(巨):87試合330打数87安打9本塁打33打点4盗塁 .264

 球界史上初のFA選手3人獲りとなった「30億円補強」の1人。5年総額15億円超とも言われる巨額契約で巨人へ。だが、1年目の今季は下半身のコンディション不良で、まさかの開幕1軍からも外れた。6月になってようやく1軍に昇格。87試合の出場で打率.264、9本塁打は、大きな期待に見合うほどの活躍とはならなかった。

○森福允彦(ソフトバンク)
2015(ソ):32試合0勝2敗14ホールド0セーブ 17回 25安打 5.82
2016(ソ):50試合2勝1敗16ホールド0セーブ 27回 23安打 2.00
2017(巨):30試合1勝3敗6ホールド0セーブ 20回2/3 23安打 3.05

 陽岱鋼らとともに「FAトリプル補強」で加入した1人。3年4億超でソフトバンクから巨人へと移籍した。左キラーとしてだけでなく、セットアッパーとしても期待されての加入だったが、開幕から出遅れてファームへの降格も味わった。結果的に30試合に投げて1勝3敗6ホールド0セーブ、防御率3.05に終わり、こちらも期待ほどの活躍とはいかなかった。

○山口俊(DeNA)
2015年(De):20試合3勝6敗 114回1/3 127安打119奪三振 4.49
2016年(De):19試合11勝5敗 138回2/3 112安打121奪三振 2.86
2017年(巨):4試合1勝1敗 21回 24安打22奪三振 6.43

「FAトリプル補強」で最も期待を裏切ったのが山口だろう。DeNAから3年契約で巨人へ移籍。だが、前年から抱えていた右肩痛の影響で開幕に間に合わずに出遅れ。移籍後初先発となった6月14日のソフトバンク戦で6回無安打無失点に封じ、チームは継投でのノーヒットノーランを達成。だが、7月に泥酔して負傷しただけでなく、訪れた病院で警備員に暴行に及び、大きな騒動に。出場停止と総額1億円にも上るとされる罰金、減俸の処分を科された。

(Full-Count編集部)

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