引抜鋼管大手の旭鋼管工業、アルミ伸管業者を買収 光学機器向けで商権、非鉄金属に領域拡大

 引抜鋼管メーカー大手の旭鋼管工業(本社・埼玉県草加市、社長・若林毅氏)は、アルミの伸管および各種加工を手掛ける東洋アルミ(本社・さいたま市浦和区)を吸収分割により買収した。買収のため100%出資の新会社「東洋アルミ鋼管」を設立し、先月21日付で買収が完了。東洋アルミの得意分野である光学機器部材、ヒートロールやマグネットロール材などOA事務機向けで商権を拡大する。また生産拠点の効率運用、非鉄金属引抜事業参入による両社既存顧客向けへの供給サービス体制も強化し「総合引抜鋼管メーカー」への脱却を図る。

 東洋アルミは1969年9月に埼玉・浦和市(現さいたま市)で創業。福島・白河市の白河工場でアルミの引き抜き・絞り、切削・表面樹脂加工などを行っていた。引抜量は月産100トン程度で、年間売上高は約12億円。ただ近年は経営環境が厳しく、後継者問題もあって事業承継先を探していた。今回、旭鋼管工業が100%出資する東洋アルミ鋼管を設立し、同社が東洋アルミの持つ権利義務を吸収分割する形で承継した。

 従業員は全員新会社で雇用。本社は旭鋼管工業と同地に置き、工場、加工設備などもそのまま使用する。

 社長は若林社長が兼務し、旭鋼管工業から早坂政輝副社長、谷森誠営業本部長の取締役2人を派遣する。

 旭鋼管工業は自動車部品向け引抜鋼管の製造が主力。オーダーを受けて初めて製造する規格外品が圧倒的で、サイズ、形状、仕様の異なる製品を月に2千種類以上も生産する。需要開拓にも積極的で、主力の自動車分野をはじめ、自社の技術が使えそうなあらゆる領域をターゲットに新規営業を展開している。

 旭鋼管グループとして、東洋アルミ鋼管の設立により既存顧客の自動車部品メーカーから寄せられる部材軽量化、アルミ化などのニーズに対し、研究・開発・製品化がしやすくなるメリットがある。また、東洋アルミの既存顧客向けで旭鋼管工業の加工技術を活用した新規需要の開拓にも注力していく。

 グループの国内引抜鋼管の製造拠点も、草加工場(埼玉県草加市)、野木工場(栃木県下都賀郡野木町)と白河工場の3拠点体制となるため、ユーザーのスペックニーズや製造品種、供給場所を考慮した効率的な活用を行う。普通鋼とアルミを中心とした非鉄金属の引抜加工を手掛けることで両社のシナジーを追求し、顧客の枠を広げた「総合引抜鋼管メーカー」を目指す。

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