中学校の完全給食 秦野市長が議会で実現へ意欲表明

 秦野市の古谷義幸市長は7日の市議会本会議で、中学校の完全給食について「実現に向けて取り組んでいきたい」と述べ、強い意欲を示した。これまで市や市教育委員会は「多額の費用がかかる」などと消極的だった。来年1月の市長選への立候補を表明している高橋昌和氏(61)が「完全実施」を公約に掲げていることもあり、「争点つぶし」との見方も出ている。

 同市立中学校全9校の生徒約4千人は昼食時に弁当を持参し、市教委は牛乳を配っている。学校給食には、校内の調理室で作る「自校方式」、給食センターから各校に配る「センター方式」、小学校の給食を持ち込む「親子方式」、市の栄養士の献立を給食業者が作って持ち込む「デリバリー方式」などがある。

 同市の試算では自校方式の場合、調理室の整備など初期投資に約33億6千万円、年間の運営費に約3億4千万円が必要となる。センター、デリバリー方式も運営費は年間約3億円という。

 これまで市教委は「中学校完全給食の実施には、建設費、運営費に多額の費用がかかる。財政は厳しく、効率的な財源活用の観点からも、将来的な校舎の建て替えなどに合わせて検討していきたい」と消極的だった。

 市教委によると、県内19市の中で完全給食が行われていないか、実施する方針を示していないのは伊勢原、横浜、茅ケ崎、平塚の4市。川崎市が今月から全市立中学校での完全給食を実施、横須賀市も昨年、完全給食を実施する方針に転じるなどしたこともあり、秦野市も実施へ向けて大きく踏み出すことになったという。

 古谷市長は7日、風間正子氏(自民党・新政クラブ)の一般質問に「自校方式で行うことが望ましいが、それまでの間、業者弁当の充実やデリバリー方式、親子方式も考えられる」などと答弁した。

 ただ、背景には1月14日告示、同21日投開票の日程で行われる市長選の存在を指摘する向きも。現状では4期目を目指す古谷市長と、新人で元財務部長の高橋氏の一騎打ちの公算が大きい。

 高橋氏は「全国的には常識。家事負担を軽減し、女性の社会参加促進、母子・父子家庭の支援にもなる」と完全実施を主要5公約の一つに位置付けている。ある市議は「古谷市長も争点にならないように、高橋氏を意識したのではないか」と指摘した。

© 株式会社神奈川新聞社