【トップインタビュー 日新製鋼建材・中尾卓社長】取引先の商品含め提案営業推進、互恵関係を強化 建材加工品比率高め、利益率向上

――日新製鋼建材が発足して2年目の今年度は、売上高が前年同期比8・9%増、経常利益が約2・47倍の増収増益で上半期(17年4~9月)を折り返している。

 「増益要因のうち在庫評価益にも恵まれたところはあるが、実力は上がってきたと考える。原板や副資材が高騰する一方で、塗装鋼板とめっき鋼板の販売量が合計で約8%伸びた。特に非住宅分野向けの出荷が好調で、めっき、塗装の全ラインがほぼフル稼働で供給に対応している」

 「本社製造所(千葉県市川市)で生産する日新製鋼の高耐食性めっき鋼板『ZAM』も堅調で、総じて操業度の上昇が収益改善に寄与した。塗装鋼板とめっき鋼板の全製品について、昨年7月の帳破明けから従来比1万円、今年1月から1万円の値上げを要請し、顧客の理解を得て製品価格に反映した上で、10月から1万円の改定を申し入れているところだ。先行きは首都圏や北海道、九州などで官民両分野とも多くの新規案件が控え、いずれも実需として顕在化するとみられるだけに、下期には上期を上回る収益を確保したい」

日新製鋼建材・中尾社長

――日新製鋼グループの外装建材製品を販売する有力特約店の全国組織「セリオス会」で昨年宣言した重点項目の進ちょくは。

 「足元で生産がタイトな状況にありながら短納期の対応については評価を得ており、今後も力を抜かず続けていきたい。新製品については、昨年度に金属サイディング製品で7品種を新たに市場投入したのに対し、今年度は新たな塗装溶融55%アルミ―亜鉛合金めっき(GLカラー)鋼板『月星GLカラー/セリオスプライム』の販売に注力してきた」

 「セリオスプライムは今春から営業生産に入り、顧客からは『(ポリエステル樹脂で業界初となる)変退色15年の保証』をはじめ明瞭なコンセプトや、高い耐傷付き性能・加工性などに対して想像以上の評価を頂いている。今後はセリオス会の会員や広く日新製鋼グループの取引先にメリットを感じてもらえるよう、それぞれの会社と弊社の製品を合わせてハウスメーカーやビルダー(住宅建築会社)、工務店などに提案営業し、スペックイン(設計織り込み)活動を通じて互恵関係の強化につなげていく」

――今後の新製品の展開については。

  「今年4月に新たな需要創造に向けて立ち上げた『マーケット開発部』が日新製鋼の開発部隊と一体になって、新たな成形ラインの導入を含めて、屋根や壁といった建材加工製品の企画・検討に入っている。新製品を開発する上で、少子高齢化を背景に建設業界で深刻化する職人不足を踏まえ、『高い施工性』や『軽量』がキーワードになるだろう。ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)が普及していく中においては、各地の工務店のお役に立てるよう耐震性や断熱性能に優れた新たな壁材の商品化も課題になってくる」

 「もっとも新設住宅着工戸数が直近の90万戸規模から2030年には50万戸台に落ちるとのシンクタンクが予測するような市場環境になっても、足元より高いレベルの利益率を計上し続けるためにも、金属外装材をはじめとする建材加工製品の売上比率を上げていかなければならない。日新製鋼のコア製品であるステンレスを使った非住宅向けの成形品を日新製鋼グループの顧客向けに生産しているのはその一例。鋼板とそれらを母材とする軽量形鋼や成形品をはじめ各種加工製品をワンストップで供給できる体制を確立した弊社ならではの生産ノウハウと販売ルートを活かして、積極的に市場ニーズを取り込んでいきたい」

――将来を見据えた基盤強化に向けて、設備投資も必要になってくる。

 「東西に26ある成形ラインは一部を新しい設備に集約し、業界最新鋭のラインを増強するなどバランスを重視したコスト競争力の高い配置に組み替えている。今夏の改修工事で1階に倉庫・物流スペースを新設した大阪工場の事務所棟のように、他の拠点においても従業員の安全にプラスアルファの機能を備えた建屋の在り方を探っていきたい」

――新日鉄住金グループに入り、さまざまなシナジー効果も出現してくるのでは。

 「生産や技術、物流をはじめ、双方の事業所でうまくリンクし、市場開拓を進めていければ、グループの利益の最大化につながってくるだろう」(中野 裕介)

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