カネコ鋼管鋼業、70年の歴史に幕 商流変化や将来見据え、事業譲渡

 各種パイプ加工販売業を手掛けてきたカネコ鋼管鋼業(埼玉県川口市)が、従業員と商権をイゲタサンライズパイプ(ISP、本社・大阪市中央区、社長・福島敏光氏)に譲渡し、70余年の歴史に幕を閉じた。今月1日からはISPの埼玉加工センターとして新たなスタートを切り、これまで蓄積したノウハウを駆使しつつ、東日本エリアにおけるISPの重要加工拠点として操業を続ける。

 カネコ鋼管鋼業は1946年10月、金子善吉氏が埼玉・川口市に創業した鋳物・金物を扱う金子商店が前身。66年に「金子商事」に改組し、2008年3月に「カネコ鋼管鋼業」に商号変更した。

アグリメコ&JFEスチールプロダクツ・上原社長

 62年から住金物産(現日鉄住金物産)との取引を始め、翌63年4月には住友金属工業(現新日鉄住金)の指定特約店に。以来、日鉄住金物産、新日鉄住金との取引は半世紀以上に及ぶ。

 小所帯ながらも「加工による付加価値をつけた製品営業」が特徴。特に前社長でオーナー一族の金子光男氏が社長に就任した1996年前後から、その傾向が顕著になった。自動車や建機、業務用厨房、避雷針など納入分野は多岐にわたる。11年12月には、同社にとって初めて社員から石元正義氏を社長に抜擢し、光男氏は副会長として(会長は兄で2代目社長だった善一氏=故人)後見にあたっていた。

 直近までも、黒字経営で完全無借金経営を継続。ただ一方で「メーカーや商社の再編による商流の変化、石元社長が対外活動に忙殺される時間が多くなったことなどを外から見てて、事業の将来性を考えるようになった」(光男氏)という。自身も71歳になり、今年9月に大病したこともあり「自分が今後いつまで会社をみていられるか」との思いもあったようだ。

 昨年8月ごろから事業の譲渡先を模索していたときに、長年取引関係のある日鉄住金物産の100%子会社で鋼管流通大手のISPが引受先に手を上げた。

 ISPは、カネコ鋼管鋼業の光男氏を除く従業員9人全員と商権を譲り受け。石元社長は埼玉加工センター長に就任した。土地・建屋は不動産管理会社として「金子商事」が所有し、ISPに賃借。光男氏は同社の運営に専念する。今後、工場棟は耐震補強工事を施し、事務所棟は建て替える予定。

 ISPとしては、カネコ鋼管鋼業が培ってきた加工ノウハウを最大限に活用。すでに基礎杭加工用の設備も新規に納入した。今後も関東全域のマーケットをにらんだ操業体制を構築していくことになりそうだ。

 「従業員と商権を何とか無事に譲渡できて、少し安堵している気持ちはある。ただ企業は絶えず進化・進歩していかねばならない。皆の奮起を期待している」と、光男氏はISPの社員となった従業員らにエールを送る。ISP埼玉加工センターの中でも、金子商事・カネコ鋼管鋼業で培ってきた加工技術やモノづくりへの姿勢は、着実に生き続けていきそうだ。(後藤 隆博)

© 株式会社鉄鋼新聞社