不戦を誓う日

 本紙の前身の長崎日日新聞も、もちろん例外ではなかった。「帝國遂に英米と開戦」と大見出しが躍っている。太平洋戦争の始まりを伝える76年前のきょう、1941年12月9日の紙面▲歴史学者の加藤陽子氏は著書「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」(新潮文庫)で、国民が開戦の報を高揚感とともに受け止めたことを指摘している。圧倒的な国力差のある英米にいよいよ大和魂で挑むのだ-と▲著名な中国文学者が〈歴史は作られた。…日本国民の決意は一つに燃えた。爽やかな気分であった〉と雑誌に記したそうだ。横浜の駅員は〈…昨日までの安閑たる気持ちから抜け出した。落ち着く所に落ち着いた様な気持ちだ〉と日記に▲悲劇というほかない結末を知る私たちが後知恵で彼らを責めることには何の意味もない。ただ、戦争が暗い顔だけをぶら下げてやって来るわけではないことは何度も学んでおきたい▲決して起きてはならない“次の戦争”もきっと「国民の生命と安全を守らねば、子どもたちの未来を守らねば」「暴挙はこれ以上許されない」と反論しにくい正義を携えてやって来る▲あの日から○年…「カレンダージャーナリズム」への批判は承知している。ならば、それぞれのカレンダーに「不戦を誓う日付」を幾つも増やしておきたい。(智)

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