こうして改善!ボーナス依存貧乏

家計は本当に改善するの?そんな質問を受けることがあります。今回は、ボーナスを毎月の生活費の補てんに使い、生活も貯金もうまくいかなかった家庭が変化した実例を報告します。

家計は必ず変えることができる

貯金できる家計にしたいけれど、我が家はすでにできる範囲で頑張っているし、もう変われっこない……そう思っている人は多いでしょう。しかし、ちょっとしたきっかけで、少し発想を変えるだけで、みるみると家計が変化し、お金が残る、貯金が増える。そういうことが起こります。

甘えや惰性は捨てて、生活の楽しみを残しながらも、必要な支出のみに抑える。そういうことを、自分や自分の家庭に合った方法で実践していけたらよいと思いませんか?今回は、貯金ゼロから生まれ変わった家計の実例をご紹介します。どのように家計が変化できるのかを知り、貯金体質へと改善する一助にしてもらえれば思います。

一見、問題のない家計に思えるYさん一家の例

埼玉県に住むYさん(41)は、同い年でパート勤務の妻と、小学2年生、5年生の子どもの4人暮らしです。住まいは賃貸住宅。年収は夫420万円ほど、妻80万円ほど、合計約500万円です。「家計はきちんと管理しているつもりなのにお金が貯まりません」ということを悩んでいます。貯金はほぼありません。

家計簿を見せてもらうと、ごく普通のようでした。少し頑張ると悩みは解決できそうです。しかし、奥さんから「これで収まればいいのですが……」という言葉が。続けて「これは現金や引き落としでやりくりできているものだけなのです。クレジットカードでの買い物が別にあります」と言うのです。

家計のピンチはクレジットカードのボーナス払いが原因

詳しく聞くと、クレジットカードのボーナス払いで生活費の補てんをしている、ボーナスに依存した家計状況でした。つまり年間のタームでいうと、1~3月および7~9月あたりは、直前に支給されたボーナスの残りを使って生活。4~6月および10~12月あたりは、クレジットカードでのボーナス払いを積極的にするという家計状況だったのです。

ボーナス補てん分とクレジットカードで使用していた分を毎月に振り分け、各費目を再計算してみたところ、初めにうかがった家計状況と大きな相違がありました。毎月5万円ほどをクレジットカードで補てんしているという、赤字家計が浮き彫りになったのです。

Yさん一家の1カ月の家計収支(改善前)

実際の家計は、ボーナスをあてにしないと回らないものでした

これではダメだね、どうしてそうなってしまったの?と思う人もいるでしょうが、こういった基本的なことができない、そして気付けない家庭は意外と多いのです。家計のやりくりの大原則は、「1カ月の収入の中で、1カ月の支出を収めること」です。お金を貯めるための鉄則でもありますが、これができずに、お金が貯まらないと嘆く家庭は実に多いのです。Yさん夫婦は現状を理解し、原則にのっとる家計管理ができるように努力しました。

Yさんが必死で行った支出改善

Yさん夫婦は、家計を改善するために様々な努力をしました。食費は一週間1万円を目標にし、外食や突然のメニュー変更もできるだけ計画的に心がけ、5万円でやりくりをしました。生命保険も保障内容を見直し、必要なものだけにして掛け金を節約しました。

そのほか、携帯電話のプラン見直しや家族サービスの付加、ガソリン代の節約、子どもの習い事は関心を持って取り組んでいるものに絞る、娯楽費はお金をかけない工夫をし、外食ではなくお弁当などを楽しむようにする、2つ取っていた新聞の一つをやめる、など、必要な部分は必ず残しながら、不要な部分は遠慮なくカットするというやり方で頑張りました。

これらを実行することで、大原則である「毎月の収入の中で支出を収める」ことができるように。頑張った分、ボーナスが出たら、行きたくても我慢していた外食やテーマパークに行くなど、お楽しみにも少し使うようにしましたが、それでも8割ほどを残せるようになり、貯金もこの2年、4回のボーナス中心の貯金で210万円ほどになりました。

Yさん一家の1カ月の家計収支(改善後)

努力により、収入の範囲で支出できるようになれました。貯金体質に近づいています

ボーナスは生活費のあてにしない

Yさんは、「多少苦しくても、毎月の収入の範囲内で生活していると、半年後のボーナスがご褒美のように思えます」と言います。ボーナスが確実にもらえるとは限らない現在、貯金をボーナスに頼るのはよくないという意見もありそうですが、当面、安定的に支給されるのであれば、あてにするのも一つの策です。その間に毎月の支出を見直し、無理せず支出を抑え、毎月貯金ができるようになるとよいと思います。

毎月の支出を5万円カットできたYさんは立派です。さらなる支出減を目指す工夫を続け、ボーナスからだけでなく、毎月の収入からも貯金ができるようになってほしいと思っています。

「ボーナスがあるさ症候群」にはならないで

ボーナス支給が当たり前の家庭では、毎月の生活費の赤字補てんによってボーナスがなくなってしまうケースが多いものです。こういう人たちを、私は「ボーナスがあるさ症候群」と呼んでいます。明らかにあてにしているという人もいますし、気が付かないうちにボーナスをあてにする生活になっていたという人もいます。

不安定な経済情勢の中、ボーナスをあてに生活していると、急に支給がストップし家計が回らなくなるという可能性も考えられます。やはり、ボーナスは日ごろの頑張りのご褒美としてとらえるようにし、支払いを補うものとして期待しないほうがよさそうです。

(文:横山 光昭)

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