“涙がでると鼻水もでる”のは魚が陸に上がったから!?

大泣きしたときには涙だけではなく鼻水もでます。これには、進化の過程で魚が陸に上がったことが関係しています。「涙」と「鼻水」の切っても切れない関係についてお話します。

わたしたちの祖先の鼻の穴は何個?

「鼻の穴は何個ですか?」と聞かれると、「2つ」ともちろん答えるでしょう。しかし、わたしたちの遠い祖先である魚には、鼻の穴が何個あるかご存知ですか?

じつは、魚には鼻の穴が4つもあるのです。この鼻は呼吸には無関係で、においをかぐためだけに用いられます。前にある「前外鼻孔」から「後外鼻孔」へと水が通り、両端の穴の間にある「においを感じる細胞」で水中のにおいを感じとります。

前外鼻孔は「わたしたちの鼻」に、後外鼻孔は「鼻涙管」へ

外鼻孔は海中から陸上生活を可能にするために、呼吸もできるように進化していきました。外鼻孔を口の中につないでいったのです。

「前外鼻孔」の2つが、現在のわたしたち四肢動物の鼻と同じように、「においをかぐ」と同時に「呼吸機能」としての役目を担っています。

「後外鼻孔」の2つ穴は、「目がしら」の方に移動して、「鼻涙管」として残存しています。「鼻涙管」によって「目がしら」と「鼻」はつながっているのです。

涙の量が多いと鼻水が出るのは、涙が目がしら」を通って「鼻」の中にあふれだしてしまうからなのです

これにはわたしたちの祖先が水中生活から陸上生活へ進出していった際に、眼が乾燥しないように涙を出し、その涙を鼻に通すことで、空気が出入りする鼻を水分で湿らせておくという進化の過程が関わっていると考えられています。

涙は、流れる量が多すぎると鼻水としてあふれ出てしまうという欠点はあるものの、私たちの先祖の鼻は、本来と形や機能を変えて、現在も意外な形で活躍しているのです。

鼻涙管が詰まると悲しくないのに涙が……

涙には、「目の表面(角膜・結膜)への栄養補給」、「まぶたを円滑に動かす潤滑材」、「細菌・紫外線から目を守る防御壁」、「雑菌の消毒」などさまざまな役割があり、悲しくなくても絶えず分泌されています。ですので、涙の通り道である「鼻涙管」が細くなったり、詰まったりすると、目から涙があふれて出て止まらなくなってしまいます。

鼻涙管閉塞には先天性と後天性があり、先天性は鼻涙管の形成異常で出生直後から常に「流涙」と「眼脂」が起こります。

後天性は、鼻炎やポリープなどの病気が原因で鼻涙管閉塞を起こす場合と、結膜炎などの眼の病気が原因で鼻涙管閉塞を起こす場合があります。 流涙や眼脂が続く場合は、近くの眼科に相談してみるといいでしょう。

(文:今村 甲彦)

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