ダウン症の娘を書家に育てて 横浜で講演

 書家の金澤泰子さん(74)が、ダウン症の娘の翔子さん(32)を書家に育て、共に歩んできた道のりを語る講演会「天使がこの世に降り立てば」が6日、横浜市緑区の緑公会堂で開かれ、500人が聴講した。人権啓発講演会として同区が主催した。

 金澤さんは東京都大田区で書道教室を主宰し、東京芸大の評議員や日本福祉大の客員教授を務める。娘の翔子さんは生後52日でダウン症と診断されたが、5歳で母に師事して書を学び始めた。20歳で開いた個展で脚光を浴び、2012年のNHK大河ドラマ「平清盛」の題字を書くなど活躍している。

 講演で金澤さんは「30年前はダウン症を隠して暮らし、普通学級にも通えず、2人で死のうと思ったこともあった」と明かす一方、一度きりと決めて開いた翔子さんの個展が反響を呼んだことを振り返り「闇の中にこそ光がある」とした。

 人の涙を誘う翔子さんの書については、「魂の純度が高く、人に優しく、幸福感に満ちた生き方の表れ」であるとし、「生きてさえいれば、絶望はない」と結んだ。

 母と娘の逸話を聞きながら、満員の聴衆はときに笑い、ときに涙を拭う人もいた。

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