文士から読み解く鎌倉 文学館館長が著書

 文芸評論家で鎌倉文学館(鎌倉市長谷)の館長を務める富岡幸一郎さん(60)が、昭和初期以降の鎌倉文士と時代背景、そこから浮かび上がる鎌倉の風土や文化を語りの文体でつづった著書「鎌倉文士とカマクラ」(銀の鈴社)を出版した。

 富岡さん自身も鎌倉に30年ほど住む。「もともと小林秀雄らが好きだったが、さらに文士を身近に感じるようになった」。富岡さんによると、鎌倉にゆかりのある近代文学者は200人以上。文士が集う大きなきっかけが1933年に刊行された同人雑誌「文學界」だった。世界恐慌や満州事変が起きて社会不安が渦巻く時代、小林や川端康成らが自由な表現の場を求めて手弁当で創刊した。

 だが「文士は過去ではない」(富岡さん)。藤沢周さんや詩人の城戸朱理さんなど現代の文学者も取り上げ、それぞれの作品に息づく鎌倉を紹介している。富岡さんは「言葉を通して文学の歴史や鎌倉に触れる。その言葉の厚み、豊かさ、深みのある世界を味わってほしい」と話す。

 1500円(税抜き)。市内の書店で販売。問い合わせは、銀の鈴社電話0467(61)1930。

 

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