産業用ドローンの新たなビジネス市場を開拓する構造物の点検ソリューション 株式会社日立システムズ(代表取締役社長:北野昌宏、本社:東京都品川区/以下、日立システムズ)の開発した「3次元管理台帳サービス(仮称)」は、日立建設設計などのグループ企業と協力して開発した構造物の点検ソリューション。産業用ドローンの新たなビジネス市場の拡大に貢献する取り組みとして注目されている。

WordやExcelによる煩雑な管理台帳をクラウドで3次元化する革新的ソリューション

 日立システムズがドローンで撮影した画像を3次元化して構造物の点検に活用する「3次元管理台帳サービス(仮称)」の開発では、日立グループで建築設計やファシリティマネジメントなどを事業にしている日立建設設計が協力している。同社は、国内の約2,000拠点で建築物の維持管理を行っている。現在の構造物の点検では、国土交通省の提示している定期点検要領のように、現場の構造物の状況をデジタルカメラなどで撮影し、WordやExcelなどで作成したレポートに画像を添付した報告書を作成している。この方式は、かつて書類で提出していたレポートをパソコンによる作業に置き換えただけのもの。そのため、点検した資料は膨大になるものの、蓄積された過去のデータを検索できず、何よりもヒビや劣化といった問題の発生した場所を正確に記録して参照するのが困難だった。

国土交通省の定期点検要領の一例

 こうした背景から、日立システムズでは日立建設設計の担当者から意見を求め、現場で必要とされる画像データの3次元化に加え、効率良く写真を管理し閲覧するシステムを開発した。日立システムズのロボット事業推進部の曽谷英司氏によれば、「現場の意見を取り入れて強化したポイントが、3次元モデルと写真を連動させるだけではなく、劣化箇所などを示すマークを付けたり、コメントを書き加えたりする機能です」と話す。

「3次元管理台帳サービス(仮称)」の画面例

特許出願した3次元モデルとのひも付け

 「3次元管理台帳サービス(仮称)」の具体的な仕組みは、スイスの Pix4D 社の航空写真測量ソフトウェアの画像処理による、ドローンで撮影した大量の画像データによる 3 次元モデルの生成。それに加えて、オートデスク社の API プラットフォーム「Forge」と日立システムズが開発し特許を出願している技術により、2 次元の画像と生成した構造物全体の3 次元モデルとをひも付けて表示する。実際に「3次元管理台帳サービス(仮称)」を操作してみると、右側に表示されている画像をマウスでクリックするだけで、それが構造物のどこに位置しているのかを左側の3次元モデルから把握できる。図面などの参照ではなく、現実の構造物に近い立体モデルで確認できるので、問題となる箇所の特定が容易になり、確実で安全な点検へとつながる。また「3次元管理台帳サービス(仮称)」は、ドローンで収集したデータをクラウドで管理する「ドローン運用統合管理サービス」のオプションとして提供されるので、登録したデータは、日立システムズの提供するクラウドサービスを介して、離れた場所からでも容易に共有できる。WordやExcleで作成したレポートをメールなどで送信することなく、管理台帳がクラウドで一元的に保管され更新されるので、点検した情報を常に最新の状態に維持できる。さらに、データを蓄積していくことで、将来的にはAI(人工知能)を活用して、自動的に劣化箇所を抽出できるようになる。

位置情報を記録できるドローンであれば機種は問わない

 「3次元管理台帳サービス(仮称)」を利用するためには、まず「ドローン運用統合管理サービス」を導入する。ただし、3次元モデルを作成するために利用するドローンの機種は問わない。DJIのPhantom 4クラスで充分に対応できるという。また、日立システムズのロボット事業推進部でも、要望があればドローンとパイロットを現場に派遣するサービスも提供している。しかし、曽谷氏によれば「実際には、すでに点検業務を行われている事業者の方々が、現場でドローンを飛ばして撮影するようになると考えています。我々はソリューションベンダーなので、『 ドローン運用統合管理サービス』をご利用いただくお客様を増やすことが、今回のオプション提供の目的です」と話す。すでに、同社には「3次元管理台帳サービス(仮称)」を活用した橋梁点検の実証実験に関する問い合わせもあり、2018年1月のサービス開始の段階でも、数社が採用を決めているという。また、「3次元管理台帳サービス(仮称)」の実演や講習会などを開催する計画もあり、詳しくは同社のサイトで案内される予定。

http://www.hitachi-systems.com/solution/s0308/robo-d/index.html

 日立システムズでは、今後もドローンを活用した点検業務に向けたソリューションやサービスを強化していく計画で、「3次元管理台帳サービス(仮称)」は第一弾の取り組みとなる。同社では、2020年度までに「ドローン運用統合管理サービス 」を200社以上に導入する目標を掲げ、そのためにビジネスパートナーとの連携を強化していく考えだ。

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