フジクラ、欧州ハーネス生産を再編 東欧モルドバで新工場開設

 フジクラは欧州で自動車用ワイヤハーネスの生産体制を再編している。ルーマニアから、同じ東欧のモルドバとウクライナの製造拠点に生産をシフト。人員を安定的に確保できる国での生産比率を増やし労務費を抑制するとともに、安定供給体制を強化している。生産移管に合わせてモルドバでは2018年1月をめどに第2工場を開設するほか、ウクライナでも来年度をめどに工場増設を検討している。両国への製造シフトは進めるがルーマニアの拠点は継続する。

 自動車用ワイヤハーネスの生産は電線を人手で車載配線として組み立てるもので、労働集約性が非常に高い。ルーマニアは欧州連合(EU)への加盟で国外への出稼ぎが増加。同国の製造拠点では離職率が上昇している。供給安定性を担保するため他国から応援を派遣し離職分の能力減を賄うことから、さまざまな経費がかさみ労務費が大幅に増加。自動車電装事業の収益に影響が出ていた。対応に向けてEU未加盟で労働力が比較的確保しやすいモルドバとウクライナに順次生産をシフト。自動車電装カンパニー統括の笹川明常務取締役は「9月以降事業は黒字化している。今後は製造シフトと併せて、移管先で品質や生産性改善を図る」としている。

 モルドバでは首都キシナウに製造拠点を有しているが、さらに生産移管を進めるため近隣のコムラートに新工場を開設する。新工場は建屋面積が約3700平方メートルで、賃借した建屋に製造設備を導入する。従業員は順次400人まで増員する計画。

 一部設備はルーマニアから移設予定となっている。400人は自動車用ワイヤハーネスの工場としては小規模。生産体制を徐々に増強することで労働市場の変化などのリスクに備える。ウクライナでは現在西部のリヴィウに製造拠点があり、工場増設を検討している。

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