横浜港・大黒ふ頭で着工 自動車船・超大型客船に対応

 横浜港の主力輸出品である自動車の取り扱い機能と超大型客船の受け入れ機能を強化するため、大黒ふ頭(横浜市鶴見区)を再編改良する国の事業が始まった。老朽化した岸壁を直すとともに浚渫(しゅんせつ)することで船舶の大型化に対応する。総事業費は89億円で、2020年度に完成する予定。

 再編改良を行うのは横浜ベイブリッジ外のP3・P4岸壁。老朽化した岸壁や桟橋の一部を撤去するとともに従来の水深7・5メートルから12メートルに増深する。これにより、隣接する自動車運搬船岸壁と合わせて延長1400メートルとなり、同時に着岸できる隻数は従来の4隻から5隻に増える。物流の効率化を図ることができ、海上輸送コストの削減や自動車関連産業の拡大が期待できるという。

 横浜市は19年3月、この岸壁に客船の乗客乗員向けCIQ(税関、出入国管理、検疫)施設を完成させる方針で、ベイブリッジをくぐれない超大型客船の受け入れにも対応する。最初の入港船は同年4月の豪華客船「クイーン・エリザベス」(9万900トン)を予定している。

 横浜港は日本を代表する自動車の輸出拠点であり、クルーズ客船の受け入れ拠点としても発展してきた。年間に約88万台の完成自動車を輸出。年間の輸出額は約1兆8千億円に及び、港全体の25%を占めている。近年は自動車運搬船の大型化が進み、大水深の岸壁の増設が不可欠となっていた。

 また、今年7月には官民連携による国際クルーズ拠点を目指す「国際旅客船拠点形成港湾」に国から指定され、今年の客船寄港数は過去最高の178回になる見通しで、来年はさらに増えると見込まれている。一方で、桁下高55メートルの横浜ベイブリッジをくぐることができない超大型客船も増えており、受け入れ対策が課題となっていた。

 19年春ごろには、横浜・みなとみらい21(MM21)地区の新港地区客船ターミナル(仮称)が開業する予定で、既存の横浜港大さん橋国際客船ターミナルなどとともに客船を受け入れることで寄港増に伴う訪日観光客の増加による観光収入の増収も見込んでいる。

 大黒ふ頭では10日、着工式が行われ、事業者である国土交通省の高橋克法政務官が工事の安全を願い関係者とともに鍬(くわ)入れした。高橋政務官は「この横浜港は日本国の財布の中身をつくってくれる大切な港湾。国交省は今後とも横浜港の機能強化に全力で取り組む」とあいさつした。

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