棟方原画発見できず 紛失時期、理由も不明 最終報告書

 県が所有する棟方志功作の板画がカラーコピーにすり替わっていた問題で、県と県教育委員会は12日、最終調査報告書を公表した。原画は発見に至らず、紛失時期や理由についても「判明しなかった」と結論付けるとともに、美術品の管理を厳格化する新たなルール案も示した。

 県は問題を公表した4月に庁内で調査チームを立ち上げ、過去の幹部職員ら延べ510人への聞き取りを実施。さらに県民ホールの指定管理者「神奈川芸術文化財団」による財団職員などへの聞き取りも延べ92人に及んだが、原画の行方や紛失理由は分からなかった。

 報告書は、コピーと判明した後の県や財団の対応について「本物はどこかにあるという思いがあり、重要物品を紛失した重大性に対する認識が甘かった」と指摘。コピーと見抜けないまま展示した県立近代美術館についても「本来専門性を発揮すべき場面で生かすことができなかった」と断じた。今月12日の県議会県民・スポーツ常任委員会で県は「県政史上に残る前代未聞の大失態。築き上げてきた信頼を一挙に失った」と謝罪。責任の所在については「関係職員の責任について検討する。財団職員は県と歩調を合わせて検討し、管理について指導していく」とした。

 新たな管理ルールは今月中に正式決定する。美術品について「特別な管理が必要との認識が欠けていた」とし、机や椅子などと同列に管理していた従来の備品台帳だけでなく、美術品に特化した台帳を作成し、年1回の点検を実施する。台帳価格が100万円以上の美術品は原則、近代美術館が管理、保管し、新たな美術品の寄付の受け入れについても管理負担を想定した上で厳格化する。不特定多数が往来する空間ではガラスなどで表面を覆い、盗難防止などの措置を講じるほか、重要美術品は損害保険に加入するとした。

 一方、県警は窃盗事件として捜査を続けている。2004年12月に撮影された板画の写真から、その時点で既に偽物だった可能性が高いとみているが、すり替えられた時期ははっきりしないという。また複写したカラーコピー機を特定するため、メーカーなどに問い合わせたものの判明には至っていない。◆棟方志功作の板画紛失 板画は棟方志功最晩年の作品「宇宙賛(神奈雅和の柵)」で、県が1974年に300万円で購入した。以来、県民ホール館長室などに飾られていたが、2014年4月に県立近代美術館で展示された際に観覧者からの指摘でカラーコピーであることが発覚。その後も県、美術館、財団などで情報共有が十分にされず、問題は17年4月に公表された。県は同月、加賀町署に被害届を提出し、大規模な調査を進めていた。

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