金属行人(12月13日付)

 建設業、製造業ともに需要が好転し、足元の鉄鋼景気は総じて復調のさなかにある。店売り末端市場も、地域によって濃淡こそあれ鋼材実需は底を打ち、勢いが戻ってきたと言っていい。市況上伸とも相まって「今期、過去最高益は間違いなし」との声も街場から聞かれるほどだ▼アベノミクスの下で景気回復が期待されながら、消費増税後の在庫調整の長期化や新国立競技場の整備計画見直しなどで首都圏の建築・インフラ整備需要胎動が遅れた▼「今年こそは…」が3年続き、短期目線では期待外れによって希望が失望へと変わったりもしたが、それでも「いつか必ず」を信じて種をまき、仕掛けづくりに精励したところが今、その恩恵に浴している▼さてこれからの展開だが…。鉄ビジネスに関わる多くの関係者は「鉄需はオリンピック直後もしばらく踊り場が続き、ピークアウトもなだらか」との見方。特に建築・土木分野についてその観測が強い▼ただ、踊り場の先に来る宴の後の静寂を見越して「足元楽観、長期悲観」を指摘する現実論者は、今は目いっぱい帆を広げて追い風を受け止めながらも、すでに風向きの変化を想定した「備え」に取り掛かり始めた。今やっと風を感じ始めた周回遅れとの差は歴然である。

© 株式会社鉄鋼新聞社