【新日鉄住金グループ企業の〝今〟(11)】〈日鉄住金物流〉鉄鋼物流、高度化目指す 生産性向上へ、次世代システム構築

 日鉄住金物流は新日鉄住金グループの中核物流会社だ。製鉄所内の構内物流や製鉄所から需要家に鋼材を届ける出荷物流などで鋼材の安定供給を支えている。人手不足という逆風の中でも安定した輸送力を維持するため、輸送効率の向上に力を入れている。

 日鉄住金物流は2013年4月に日鉄物流と住友金属物流が統合し現在の経営体制となった。新日鉄住金が製造する鋼材の内航船輸送をほぼ一手に請け負うほか、陸上輸送では新日鉄住金の国内製鉄所からのトレーラーなどによる一次陸送の8割強(数量ベース)を担っている。

 製鉄所内の構内物流では地域子会社7社(釜石、鹿島、君津、名古屋、広畑、八幡、大分)が原材料の揚陸作業や溶銑・鋼片の鉄道輸送、鋼材の船積み作業などを手掛ける。新日鉄住金グループ向けが売上高の約8割と主力だが、外販分野でもプラントなどの重量物輸送に対応。全国に広がる海陸の物流ネットワークが武器だ。

 今後の最大の課題は「人手不足」だ。内航船の乗組員やトレーラーの運転手は高齢化が進む一方、少子化で新たな担い手の確保は難しさを増す。今後も安定した輸送力を確保するには人件費などで一定程度のコスト上昇が避けられない情勢だ。

 各種規制の強化もコストに響く。陸運業では労働基準法の改正で労働時間の管理が厳格化され、22年度以降は中小企業でも月60時間超の時間外労働について給与の割増率引き上げが求められる。海運業でも20年1月から船舶の硫黄酸化物(SOx)排出ガス規制が強化されるため、その対策が必要になる。物流業は中期的にもコストアップを迫られる形だ。

 酒本義嗣社長は「厳しい経営環境を乗り切るキーワードは生産性の向上だ」と強調する。生産性向上の具体策の1つは次世代物流システムの構築だ。例えば内航船は一般的に航海時間の約4割が待機時間や空船航海とされ、運航効率を高める余地は少なくない。新システムではビッグデータやIoTの活用で関係者がリアルタイムで情報共有し、製鉄所での荷積みから航海、中継地での荷降ろしまで一貫最適の視点で運航効率を高めることを検討する。次期中期経営計画(18~20年度)のテーマとして新日鉄住金本体などと連携して取り組む方針だ。

 3月に新日鉄住金の子会社となった日新製鋼の物流子会社、月星海運との連携強化もこれからの課題。「輸送効率向上に向けた共同の取り組みを検討している」(酒本社長)。

 鉄は幅広い産業を支える基礎材料。鋼材の物流が滞れば、日本の製造業が止まってしまう。逆に「鉄鋼物流の効率化は、日本のものづくり産業全体の競争力強化につながる」(酒本社長)。運ぶだけでなく、物流技術の担保や人材育成の役割も強化しつつ鉄鋼物流のプロ集団として成長を目指す。(このシリーズは毎週水曜日に掲載します)

企業概要

 ▽本社=東京都中央区

 ▽資本金=40億円(新日鉄住金の出資比率100%)

 ▽社長=酒本義嗣

 ▽売上高=2145億3千万円(17年3月期連結)

 ▽主力事業=海上運送事業、港湾物流、陸上運送事業、製鉄所構内物流事業

 ▽従業員=7600人(連結、17年3月時点)

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