【工場ルポ】〈植田アルマイト工業・形材生産、表面処理の三重工場〉国内随一のカラーバリエーション フル稼働続く、人員の補充課題

 植田アルマイト工業(本社・大阪府堺市東区、社長・植田信夫氏)は、業界最大手のアルマイト専業メーカー。拠点は本社工場・堺硬質工場(堺市東区)と三重工場・三重硬質工場(三重県三重郡菰野町)。今期、過去最高の売上高30億円を見込むなど業績は好調だ。このほど三重工場を見学する機会を得たので紹介する。(白木 毅俊)

 創業は1948年で、来年が創業70周年の節目。同社が手掛けるアルマイトは形材、板材、硬質アルマイトの3本柱。形材は建材や車両などに、板材はパネル建材に多数使用されている。硬質アルマイトは耐摩耗性が要求される自動車や産業機械部品など多様な分野で使われる。

 足元の月産量は本社および三重工場で生産する形材が1400トン(本社600トン、三重800トン)、板材(本社工場)が15万平方メートル。従業員は190人。

 三重工場の竣工は、創業50周年の節目だった1998年。中部地域に主要ユーザーである押出メーカーが多く、将来的な自動車分野への参入などを考慮し三重に2番目の拠点を置いた。月間処理能力1千トンを持つ全自動縦吊り表面処理ラインを導入、2005年には敷地北側に硬質アルマイト専用工場が竣工、現体制となった。従業員は70人。

 「三重で手掛ける表面処理は、形材を主体としたアルマイト処理、それにアルミニウム合金・鋳物・ダイカスト材向けの硬質アルマイト処理の大きく2種に区分できる。アルマイト処理は清潔感のある『ホワイト電着塗装』、高級感のある『グレー電着塗装』、ダイス目やロール目を消し均一で美しいマット(梨地)調の『マット仕上げ』など、国内随一のカラーバリエーションを持つことが特長だ」(木串亮一製造本部三重工場長)。

 硬質アルマイト処理では、汎用タイプの「UAコート」、高潤滑性タイプの「UFコート」など、7種のラインアップを用意している。

 「例えば、『UAコート』は耐熱・放熱・耐候性に優れ、硬度が300~450HVで耐摩耗性が良い。『UFコート』は多孔質層にフッ素樹脂を含ませることで耐摩耗性が飛躍的に向上、シリンダーなど摺動用途に最適だ」(同)。

 その他では樹脂複合タイプの「タフマイト」、導電性・抗菌性を有する「ユニマイト」、硫酸液を用いない「シュウ酸硬質アルマイト」、マグネシウム専用の「マゴキシドコート」などがある。

 敷地(2万2400平方メートル)内に倉庫、全自動縦吊り表面処理ライン、生地倉庫・包装場が並ぶ。同ラインは36の処理槽、全自動搬送装置6基、整流器19台、冷凍機4台で構成。

 「製品は荷受時点でパレットごとにバーコードで管理される。処理工程は全自動制御で、人手が介在するのは最初の形材を治具に取り付ける時と、処理を終え取り外す時だけだ。ここで処理される製品は新塊由来、再生ビレット由来など素材に違いがあり、通常、色合いの均一化が困難。しかし、これまで培ってきた表面処理技術を駆使することで、カラーの均一化を実現している」(同)。アルマイト処理した後、丁寧に梱包し出荷される。

 敷地北側の硬質アルマイト専用工場には、全自動表面処理設備(処理槽46槽、手動搬送装置4基、整流器9台、冷凍機1台)が置かれている。

 一時期の2班体制から今期は3班2交代に戻ったが、依然フル稼働の状態。人員補充が最大の課題という。「技術伝承を図るためにも、三重だけで5人程度の人員補充を行いたい」(同)。設備投資では年度内をめどに冷凍機3台の更新、道路の舗装などを行う予定。福利厚生施設の充実化も検討中である。

 「引き合いはトラックのリアドアやLED照明用のホワイト色、内外装建材用グレー色などが多い。ホワイト電着塗装の発色の良さには自信があり、顧客からも『純白が綺麗』とよく言われる。アルマイト処理に関し、今後とも顧客のお役に立てるよう品質第一で臨みたい」(同)。

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