MLB通算434発・元楽天AJが心に刻む感動 「日本を愛している」理由とは

単独インタビューで日本への愛情ついて語ったアンドリュー・ジョーンズ氏【写真:福谷佑介】

アンドリュー・ジョーンズが日本愛を激白「僕は日本を愛している」

 胸の中にある日本への愛着、愛情が溢れ出て、抑えきれないようだった。都内某所。単独インタビューに対して「僕は日本のことを愛しているんだ」と語ったのは、かつてブレーブスなどでメジャー通算434本塁打を放ち、2013年、楽天の日本一にも貢献したアンドリュー・ジョーンズ氏その人である。

 1996年にアトランタ・ブレーブスでメジャーデビューを果たしたジョーンズ氏。1998年に31本塁打を放つと、2000年から4年連続30本塁打を記録。2005年には51本塁打を放って本塁打王に輝くなど、メジャーリーグを代表する大打者であった。2013年にはメジャー通算434本塁打の実績を引っ提げてヤンキースから楽天に移籍し、4番打者として楽天初のリーグ優勝、日本一に導いた。

 今回来日中にインタビューに応じたジョーンズ氏と日本の縁は意外にも深い。「実は僕は1989年に日本に一度来ているんだよ」という。ジョーンズ氏の“日本愛”は、この時に生まれている。

「11歳か12歳以下の大会が日本で開催されてね、そのメンバーになって1週間くらい日本に滞在したんだ。その時のホストファミリーが物凄く良くしてくれたんだよ。その経験があって、すぐに日本の大ファンになったんだ」

 28年前の記憶を思い返す表情には柔和な笑みが広がる。少年時代に訪れた日本で感じた日本人ホストファミリーの親切さが、後にメジャーリーグで大打者となるジョーンズ氏の胸を打った。

 1993年、ジョーンズ氏はアトランタ・ブレーブスと契約を結び、19歳だった1996年にメジャーデビュー。1997年以降は目覚しい活躍を見せた。「それからというもの、メジャーリーグでシーズンオフに日米野球が開催される時には、僕は必ず手を挙げて出場を希望したよ。それで日本に来ることが出来たね」。2006年の日米野球ではMLB選抜の一員として来日。第3戦では本塁打も放っている。

日本行きは「全く難しい決断ではなかった」、東日本大震災の復興支援活動も

 ジョーンズ氏に再び日本との縁が生まれたのは、2012年のオフのことであった。この年、ニューヨーク・ヤンキースでプレーしていたAJだが、控えが中心。94試合で233打数46安打14本塁打34打点、打率.194という数字に終わり、シーズンが終わるとヤンキースからFAとなった。ここでオファーを出したのが楽天だった。

「ヤンキースでは、どちらかというとベンチでサポートする役割になっていたんだけど、自分の中ではまだ毎試合出て、チームに貢献できるという気持ちがあった。楽天からオファーがあったときは、自分にとっては全く難しい決断ではなかった。すぐに『イエス!』と答えて、日本に来ることを決めたんだ」。こうして、メジャー屈指の強打者は、日本球界に身を投じることを決断した。

「自分の中では日本での経験があったので、馴染むこと、アジャストすることは、他の選手に比べて難しいことではなかったよ。それまでの日本での経験は東京が中心で、福岡や札幌にも行ったことはあったけどね」。楽天移籍1年目は2013年。2011年3月11日に東日本大震災に見舞われた宮城県、そして東北地方は今なお続いている復興へ歩んでる最中だった。

「仙台は大きな震災もあった。そういう状況でシーズン通してプレーする中で、チームメートみんなでホームラン打つたびに復興支援への寄付をしようという活動もしながら、街と一緒に日本を体験できた。その中で日本シリーズも勝つことができた」。2013年1月、来日直後に被災地を訪問したジョーンズ氏は、なおも残る震災の爪痕を目の当たりにして衝撃を受けた。

楽天で2年間プレー、「本当はもう1年日本でプレーしたかった」

 ケーシー・マギー(現巨人)とともに1本塁打につき5万円を震災孤児へ支援金として寄付するという活動にも取り組んだ。来日1年目、楽天は球団創設後初のリーグ優勝に輝き、日本シリーズも制した。「自分の中では本当に予想できないくらいの素晴らしい経験ができた。その全てをひっくるめて、僕は日本が大好きなんだ」。ジョーンズ氏にとって日本で過ごした2年間はかけがえのない時間となった。

「プレーしたのは2年だったけど、本当はもう1年日本でプレーしたかったんだ。ただ家族と過ごす時間というのも必要な時期だったので、残念ながら2年で終わることになってしまったんだ」と、退団することとなった2014年オフの思いも明かしたジョーンズ氏。外国人から見た日本の、そして日本人の良さを聞くと、こう答えてくれた。

「言葉にすることは難しいんだけど、自分の信じることを貫くという姿勢が多くの日本人に見られるよね。普段の生活でもそうだし、仕事でも、野球でも、そういう一面が見られる。決して悪い意味ではないんだよ。一本気なところが、私も好きなんだ。たまには殻を破る、違うものを見る、トライしてみる、そういう柔軟性があったら、もっといいのかなとも思うんだけどね。ちょっと上手く言葉では伝えられないんだけど、そういうところが日本人の良さであり、魅力的なところなんじゃないかな」と。

(Full-Count編集部)

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