金属行人(12月15日付)

 「生命」の意味について、イギリスの理論物理学者スティーブン・ホーキング博士が語っている―「エントロピーの法則に逆らっている存在」と▼自然状態では、熱は冷めていく。形あるものは、崩れる。それに抵抗しているのが生命。外部からエネルギーを取り入れることにより、保とうとする。とすれば「生きる」ことは、それだけで自然状態に抵抗しながら、無意識にせよ「頑張って」活動しているということ▼さらに「人」として生きるには工夫がいる。特にグローバル社会で生きるには、知恵と工夫が必要。習慣も価値観も異なる共同体間の交流。よほど主体性を前面に出さなければならない。これから本当に訪れるグローバリゼーションへの心の準備はいいか▼一方、現在の社会の基本単位は家庭、職場。「シートン動物記」で有名なアメリカの博物学者アーネスト・シートンは、そこでの基本ルールとして「親を敬うこと」を挙げ、その理由を説明する―「先祖代々親孝行をしてきたから人間になれたのだ」と。単に「親孝行をしなさい」「先輩を大切にしなさい」というアプローチではない。自然状態に逆らって地球上のエネルギーを使い、「頑張って」共同体を形成してきたからこそ、今日があると言える。

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