「手話(しゅわ)」を知っていますか? 耳が聞こえない人たちが日常(にちじょう)のコミュニケーションのために、手や指、体の動きを使って表現(ひょうげん)する「目で見る“ことば”」です。みんなが会話をするときに声の調子を変えるように、手話も顔の表情(ひょうじょう)やしぐさを使い、気持ちをゆたかに表すことができます。
手話にくわしい県聴覚障害者情報(ちょうかくしょうがいしゃじょうほう)センター所長の本村順子(もとむらじゅんこ)さん(70)に教えてもらいました。さあ、みんなも簡単(かんたん)な手話にチャレンジして、聴覚障害のお友達と会話をしてみよう! (輔野沙織 すけのさおり)
(1)おはよう
右手こぶしをまくらのようにして頭をかたむけ、頭を起こすと同時に右手を下げる。
(2)はじめまして
「初めて」と「会う」を連続して表現する。
「初めて」横にした左手の甲に右手のひらを平行に重ね、右手を上げながら人さし指以外をにぎる。
「会う」右手と左手の人さし指を立てて指のはらを向かい合わせ、同時に近づける。
(3)ありがとう
左手の甲の上に右手を垂直に立てて乗せ、右手だけを上げる。
(4)楽しい
両手の手のひらを、胸の前で交互に、上下に動かす。表情も笑顔でゆたかに。
(5)いっしょに遊ぼう
「いっしょに」両手の人さし指を前に向け、胸の真ん中で合わせる。
「遊ぼう」両手の人さし指を立て、頭のあたりで前後に、交互に動かす。
◎まめ知識
手話は、文化や風習などそれぞれの生
活の中から生まれているから、世界共通では
ないんだ。でも、表情(ひょうじょう)や形で、外国
人にも70%くらいは通じるんだって。
辞書に新しい言葉がふえるように、手話も毎年ふえるんだよ。音声の言葉と同じように、意味をつかんで研究。例えば今年、小型無人機の「ドローン」が加わるなど、計175個(こ)の手話がふえたんだよ!
実は、手話は普段(ふだん)の生活の中にもかくれ
ているよ。親指と人さし指で丸を作る「OK」や、両手で×をする「だめ」など。
それらのジェスチャーは、手話としても使われているんだ。
ほかにも、指であっち、こっちと指す、おいでと手でまねく、とかたくさん。「手話はむずかしそう」と思っている子は、簡単(かんたん)なジェスチャーから始めてみてもいいかもね♪
◎長崎県聴覚障害者情報センター所長
本村 順子(きむら・じゅんこ)さん(70)
1878(明治11)年、日本で初めて、京都に聴覚(ちょうかく)・視覚障害児(しかくしょうがいじ)のための学校がつくられ、手話が生まれました。今から139年前のこと。全国から耳の聞こえない子どもたちが集まり、身ぶり手ぶりで気持ちを伝え合ううちに、手話へと変化していきました。
わたしは12歳(さい)のとき、病気で突然(とつぜん)耳が聞こえなくなりました。家族とも会話できなくなり、6年間家に引きこもっていましたが、聴覚障害者の職業訓練施設(しょくぎょうくんれんしせつ)があることを知って入所。そこで初めて、わたしと同じように聞こえない人たちがたくさんいることを知りました。
手話を少しずつ教えてもらい、人と会話できるようになり、自分の世界が大きく、楽しく変わりました。早く知っておけばよかったと思いました。
聞こえる人たちが「音声」で会話するのと同じように、手話も一つの「ことば」。聞こえる人たちが手話を使い、いつでも、どこでも、聞こえない人たちとコミュニケーションできるようになることが、聴覚障害者たちの願いです。
みなさんも、手で話す手話の世界にふれてみませんか? きっと楽しい、知らなかった世界が広がるはずです。手話を通して、すばらしい世界を広げていきましょう。
聴覚障害者のコミュニケーションは手話のほか、筆談や指文字、空文字などがあるよ。耳の聞こえない人たち全員が手話を使うとはかぎらないから、一人一人に合ったコミュニケーションを大事にしようね!