Who's who!? 速さや動作をつくるプロコーチ 里大輔さん(32)=長崎市出身= スピード通じ選手に夢を

 もうこれ以上速く走れないだろうか。もっと強いシュートが蹴れたら-。

 アスリートが描く夢を実現させるために、必要なことや踏むべき段階を分かりやすい“説明書”に変換して提供する。職業をひと言で表すのは難しいが、メインは「スピードコーチ」。本県陸上短距離界の第一人者だった里大輔さんは今、あらゆる競技の選手一人一人の「質の向上」のために、世界中を飛び回っている。

 現在、担当しているのはラグビー日本代表のランニングコーチ、国内外のサッカー選手・陸上短距離選手のパーソナルコーチなど。このほか、各種競技のコーチの指導にも携わる。主に追求するのは「スピード」。動き一つ一つの速度を上げて、全体のパフォーマンスをレベルアップしていく。

 この新しい分野のコーチ業を目指した根底には、長崎市立橘中時代から24歳まで続けた自らの陸上経験がある。選手としては小柄な身長170センチの体で勝負していくために、何が必要なのか。必然的に身につけた「考える力」が現在のバックボーンだ。

 中学時代から、陸上も「100メートルを走る」と捉えてはいなかった。「体をどう動かしたら速い一歩につながるのか考える。その連続がたまたま100メートル」。この考える力を生かして、中学3年で臨んだ地元開催の全国中学大会で優勝。長崎南高3年時も静岡国体少年Aで2位入賞した。

 ただ、高校時代は故障続き。浜松大、静岡大大学院に進んで2008年北京五輪の代表選考レースにも挑んだが、世界の舞台は遠かった。09年に現役引退。10年春から7年間、浜松大の助教として陸上部監督を務めた。

 16年に個人会社「SATO SPEED」(浜松市)を設立。指導した選手やチームが世界で活躍する機会が増えていく。現役時代は届かなかった世界の舞台。そこで、彼、彼女らを通じて戦わせてもらえるのをありがたく思う。

 大学から離れて活動の幅が広がった今、強く願っていることがある。「長崎のスポーツに関わり、古里を盛り上げたい」。この小さな県から日本や世界のトップレベルを目指し「世の中の度肝を抜く」ような勝負がしてみたい。実現すれば、最高の喜びになるだろう。

市民向けのセミナーで体づくりや美しい動作について講演する里さん=長崎市内

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