量子コンピュータ関連で注目の7銘柄

2017年夏に、文部科学省は計算能力がスーパーコンピューターの9000兆倍ともいわれる「量子コンピュータ」の実用化に向け、2018年度から10年間で約300億円の資金を投じる方針と報じられました。世界では量子コンピュータの開発競争が過熱しつつあります。

「量子コンピュータ関連」で注目の7銘柄

2017年夏に、文部科学省は計算能力がスーパーコンピューターの9000兆倍ともいわれる「量子コンピュータ」の実用化に向け、2018年度から10年間で約300億円の資金を投じる方針と報じられました。世界では量子コンピュータの開発競争が過熱しつつあります。カナダのディー・ウェーブ・システムズ社(以下、Dウェーブ)が2011年に実用化に成功。各国が資金援助の政策を打ち出し、日本もこの流れに追随する動きとなっています。

スーパーコンピュータを含む、一般的なコンピュータの計算は「0」「1」の組み合わせで行なわれます。最初の「0」か「1」かを1ビットといい、「001」、「010」など3ビットになると組み合わせは8通りになります。30ビットではこれが1億通りになるといいます。つまり、現行のコンピュータの計算が複雑になるほど、計算量が爆発的に増える仕組みになっているのです。

一方、量子コンピュータでは「0」と「1」の両方の状態を計算することで高速化できる仕組みです。わかりやすくいえば、一般コンピュータの30ビットを一度に表示することで、瞬時に計算が完結することになるのです。

米防衛大手のロッキード・マーチン社やグーグル、NASAなどがDウェーブ製品を購入したとされています。ロッキードはステルス戦闘機の開発に、グーグルは人工知能(AI)などの研究に活用していると燃されています。欧州の自動車メーカーが、渋滞の緩和や自動運転ための計算に量子コンピュータを使っているとの観測もあるようです。大量の計算が超高速で可能になる量子コンピュータの開発競争は激しさを増しています。

量子コンピュータの商用化という点では日本が先行している

しかし、カナダが先行した量子コンピュータですが、商用化という点では日本が先行しています。今回は、量子コンピュータ関連銘柄を取り上げます。量子コンピュータが商用化されれば、膨大なデータを検索する必要がある医薬品の開発、災害時の避難経路、復興の計画立案、さらには株式運用でのポートフォリオの構築にも役立つと見られます。

富士通

国内の最有力候補です。同社とカナダの1QBit(ワンキュービット)社は2017年5月に、量子コンピュータ技術を応用した、組み合わせ最適化や機械学習などのAI(人工知能)分野での協業を開始しました。1QBitがソフトウエアを、富士通がハードウエアを担当します。

ハードは富士通とトロント大学が開発した、従来の半導体技術を用いて組み合わせ最適化問題を高速に解ける計算機アーキテクチャー「デジタルアニーラ」で実行します。富士通が有する汎用コンピュータ技術と量子コンピュータの融合とも言える手法です。厳密には量子コンピュータではありませんが、一定条件では量子コンピュータと同等以上の性能があることが確認されています。

Dウェーブ社の製品は特定のチップを絶対零度に近い温度で冷やす必要があります。これには多額のコストがかかりますが、富士通ではこれも不要です。来年早々にも、実際に受注に結びつくとの見方が出ています。

NTT

2017年11月に、国立情報学研究所などと共同開発した量子コンピュータを、クラウドのシステムとして一般公開しました。光の量子力学的な特性を用いて最適化問題解を高速に得る「量子ニュートラルネットワーク(QNN)」を装置化し、長時間の安定動作を実現しています。興味を持った企業との連携を図る見通しです。

日立製作所

NTT同様に、量子力学にこだわらない「イジングモデル」と呼ばれるコンピュータを開発中とされます。英ケンブリッジ大学と開発を進めているとも報じられています。

フィックスターズ

半導体を用いた高速化ソリューションを提供。17年6月にDウェーブ社と量子コンピュータに関する協業を開始する旨の合意をしました。量子コンピュータの導入支援なども行なうもようです。

ブレインパッド  

量子コンピュータに必要な量子アニーリング理論のビジネス活用で先行しています。

エヌエフ回路設計ブロック

量子コンピュータにおける、超電導デバイスの信号増幅に用いる微少信号測定器を手がけています。

ユビキタス  

グループ企業が、米社と量子コンピュータ向け暗号化技術の国内総代理店契約を締結しています。

(文:和島 英樹)

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