《京都》旧三井家下鴨別邸で現代アート展とライトアップ

建物に光を照射するのではなく、内部から光によって施したライトアップで、まるで光の彫刻のような雰囲気を醸し出す旧三井家下鴨別邸=京都市左京区 (写真・田中幸美)

 京都にはさまざまな歴史的な建物がありますが、そのうちの1つ、重要文化財に指定されている旧三井家下鴨別邸(京都市左京区)で、「光の現代美」をテーマにしたモダンアート展と建物のライトアップが行われています。

大正期の大規模なお屋敷がきれいな形で残っている旧三井家下鴨別邸。特別なライトアップを施さなくても十分美しいたたずまいです

 アート展は、通常は非公開となっている母屋の2階と茶室を舞台に、2人の中国人を含む10人のアーティストがさまざまな観点から光と明かりをテーマにした作品、計約50点を展示しています。

染織家の吉岡更紗さんの作品は建物にベールをかけたよう

 また、夜は、東京駅100周年記念ライトアップや二条城などのライティングプロジェクトを手がけた高橋匡太(きょうた)さんが、幻想的な色合いを醸し出した建物を下鴨の森に浮かび上がらせています。
 この展示を企画した「超京都」によると、一見地味でありながら材料がよくて直線的な構成が美しいこの建物の特徴を理解して、それを生かした作品を提供してくれるアーティストを集めたそうです。

建物の内側からまるで生きているかのような光の演出でライトアップを施した高橋さんの作品

 中国人の孫遜さんは、京都で展示することを強く意識して、西安→韓国→日本というルートで〝文化をたどる旅〟をして京都に至ったといいます。作品はその道中の飛行機や電車の中、滞在先のホテルで新聞紙を素材に九頭の龍と戯れる僧侶を描いたもの。それを日本で完成させました。

孫遜さんは、新聞紙に描いた作品を展示会前日の夜中までかかって完成させたといいます

 神鏡や魔鏡などを製作する山本合金製作所(京都)に生まれた鏡師の山本晃久氏は、伝統技法を受け継いだ鏡を展示。

光を宿し、光を発する山本さんの鏡には神秘的な魅力があります

 また、建物のライトアップを手がけた高橋さんは、外から照射するのではなく、建物の内側から光を発するようなライティングを施し、まるで「光の彫刻」のようです。

14日に行われた内覧会では、作家が記者会見で自らの作品について語りました。左橋が孫遜さん、左から2番目の赤いコートが高橋匡太さん

 高橋さんは「フルカラーのLED照明を使っているのですが、大正時代の流行色の演出を心がけました」と話していました。赤、紫、青と十数秒単位で色合いが次々に変化し、そのたびに和モダンの大正期建物を染め上げていました。建物のライトアップと呼応したように光が代わるちょうちんを手にして散策することもできます。「来場者のかたにも風景の一部になってもらって夜景を作っていきたい」ということです。

建物の色は十数秒ごとに変化します

 下鴨神社の南に位置する旧三井家下鴨別邸は、三井北家(総領家)第10代の三井八郎衛門高棟によって1925(大正14)年に建てられました。この場所には三井家の先祖を祀る顕名霊社(あきなれいしゃ)と呼ばれるお社があり、参拝の際の休憩所となっていたそうです。

金氏撤兵さんは通常は非公開の茶室に、金の作品を展示しました

 主屋部分は、明治時代に木屋町三条にあった三井家の木屋町別邸を移築。1949年(昭和24年)に三井家から国に譲渡され、51(昭和26)年~2007(平成19)年には京都家庭裁判所の所長官舎として使われていました。
 大正期までに整えられた大規模別邸の屋敷構えがきれいな形で残っていることなどから2011年に、重要文化財に指定されました。管理を担当する京都市が修復をして、昨秋から、2階と3階を除いた一部が一般公開されています。(写真はすべて田中幸美)

◆旧三井家下鴨別宅は、京都市左京区下鴨宮河町58ー2。光の現代美とライトアップは、12月25日(月)まで。問い合わせは☎075・366・4321。

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