知ってた?「いただきます」「ごちそうさま」の本当の意味

そうだったのか!「いただきます」本当の意味

なぜ「いただきます」「ごちそうさま」と言うの?

これは、ある親子の食事前の会話です。

父: コラッ、「いだだきます」って言ってないぞ。子: あ、忘れた。母: もーダメでしょ!子: そんなに怒らなくてもいいのに……。母: あなたのために注意してるの。お行儀が悪いとあとで困るでしょ。子: ねぇ、どうして「いただきます」「ごちそうさま」って言わなきゃいけないの? 

さて、あなたなら何と説明しますか?

「いただきます」の語源

まずは語源を紹介します。「いただきます」の「いただく」は、神様にお供えしたものを食べるときや、位の高い方から物を受取るときに、頂(いただき。頭の上)にかかげたことから、「食べる」「もらう」の謙譲語として「いただく」が使われるようになったことに由来します。やがて、食事を始める時に「いただきます」と言うようになり、食前の挨拶として定着しました。

「いただきます」の意味

食事を始める時の「いただきます」には、2つの意味があります。

■1つめ 食事に携わってくれた方々への感謝

料理を作ってくれた方、配膳をしてくれた方、野菜を作ってくれた方、魚を獲ってくれた方など、その食事に携わってくれた方々へ感謝のこころを表しています。

■2つめ 食材への感謝

肉や魚はもちろんのこと、野菜や果物にも命があると考え、「○○の命を私の命にさせていただきます」とそれぞれの食材に感謝しており、こちらが本意だと言われています。

先日、私の尊敬する日本文化の先生がこの話をされたとき、聞き手の背筋が伸びたのがとても印象的でした。おなじみの言葉でも、その背景を知ることで心持ちが変わってくるのでしょう。

その先生のお宅では、お孫さんが「にんじんの命を私の命にさせていただきます」と言ってはパクッ、「卵の命を私の命にさせていただきます」と言ってはパクッ、と食べているそうです。

そこで思い出したのが、給食費を払っているのだから「いただきます」を言う必要はないと学校に申し入れた親がいる、という話です。もう何年も前のことですが、世間の話題になった際、世知辛い世の中になったものだと嘆く方が多かったのを覚えています。

また、お金を払っているのだからお店で「いただきます」を言う必要はないと考える人が少なからずいるそう。いずれもお金が中心で、「いただきます」の6文字に、生きる姿勢が垣間見えます。

「ごちそうさま」の語源と意味

「ごちそうさま」を漢字で書くと「御馳走様」。昔は今のように冷蔵庫もスーパーマーケットもありませんから、食材を揃えるのは大変なことでした。「馳走」は走りまわるという意味で、食事を出してもてなすために奔走する様子をあらわしています。

やがて、丁寧語の「御」をつけた「御馳走」にもてなすという意味が含まれるようになり、贅沢な料理をさすようにもなりました。

そして、いろいろと大変な思いをして食事を準備してくれた方への感謝を込めて「様」がつき、食事のあとに「御馳走様」「御馳走様でした」と挨拶するようになったのです。

日常の挨拶がこころの栄養に

ほかの国では、食事の際に宗教的な儀式はみられますが、「いただきます」「ごちそうさま」のような挨拶をしない国もあります。「いただきます」「ごちそうさま」には、日本人の考え方や食文化が色濃く反映されているのです。

人と人との関わりや食への関心が高まる今、「いただきます」「ごちそうさま」に教えられることは多いでしょう。子育て中の方はなおさらです。何気ない挨拶ですが、意味を知って使うことで、こころの栄養につながるのではないでしょうか。

(文:三浦 康子)

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