なでしこリーグ入替戦「ちふれASエルフェン埼玉」VS「セレッソ大阪堺レディース」

 12月16日(土)埼玉県川越市の川越運動公園にて「2017プレナスなでしこリーグ1部・2部入替戦」が実施され、1部9位の「ちふれASエルフェン埼玉」と、2部2位の「セレッソ大阪堺レディース」が熱戦を繰り広げました。

 最終結果は0-3でセレッソ大阪堺レディースが勝利を掴み、1部への昇格を達成しました。残念ながら残留は果たせなかった、ちふれASエルフェン埼玉ですが、涙を流す選手達の姿、そしてキャプテンの中野里乃選手の挨拶から2018シーズンへの新たな覚悟や決意を感じ取ることができました。

(試合開始前のちふれASエルフェン埼玉の選手達)

なでしこリーグの仕組み「1部」と「2部」の入替制度

 一般社団法人日本女子サッカーリーグは1部リーグ、2部リーグ、3部リーグで構成されています。1部リーグは全10チーム。「なでしこリーグ」と呼ばれて親しまれています。Jリーグと違い、なでしこリーグに所属する選手の多くがアマチュアという特徴を持ちます。

 2017シーズンの1部リーグは全18節。10チームによる2回戦総当たりが実施され、1位は日テレ・ベレーザ、2位はINAC神戸レオネッサという結果に。

 なでしこリーグでは、1部で10位となったチームと2部の1位となったチームは自動で所属リーグが入替になります。そして、1部で9位になったチームと2部で2位になったチームは、自動ではなくアウェーとホームそれぞれで1試合ずつの合計2試合を行い、その結果により残留、降格、昇格が決定します。

 今回筆者が注目して追いかけた、ちふれASエルフェン埼玉は2017シーズン1部の9位。2部2位のセレッソ大阪堺レディースとの2試合の結果次第で1部に残留できるか決まるという状況にありました。

なでしこリーグ「ちふれASエルフェン埼玉」とは

 Golaco[ゴラッソ]では先日、丸山桂里奈さんが、ちふれASエルフェン埼玉の副キャプテン薊(あざみ)理絵選手と、鈴木薫子選手に注目してコラムで取り上げました。

持ち味はスピード、アグレッシブに動ける体力 ちふれの薊理絵選手とはゴールへの嗅覚鋭い愛されキャラ ちふれの鈴木薫子選手とは

 ちふれASエルフェン埼玉は、埼玉県狭山市に拠点を持ち、2002年から日本女子サッカーリーグに加盟したチームです。2004年に「NPO法人エルフェンスポーツクラブ」を設立。地域総合型スポーツクラブとして、地域貢献やスポーツ活動を積極的に行っています。

 名前に「ちふれ」とある通り、チームのトップパートナーである株式会社ちふれ化粧品とネーミングライツ契約を締結し、2016年1月から「ちふれASエルフェン埼玉」という現在のチーム名になっています。

「ちふれASエルフェン埼玉」VS「セレッソ大阪堺レディース」

(相手ゴール前に攻め込むちふれASエルフェン埼玉の選手達)

 「2017プレナスなでしこリーグ1部・2部入替戦」は来場者数2,280人を記録。試合開始は13時でしたが、午前10時から川越運動公園内で屋台やイベントの出店があり、午前中から賑わっていました。

 12月9日(土)には、ちふれASエルフェン埼玉にとってアウェーの大阪府で試合が実施され、結果は0-1でセレッソ大阪堺レディースが勝利。

 今回は、ちふれASエルフェン埼玉側のホーム、埼玉県で試合が実施となりましたが、ちふれASエルフェン埼玉への声援に混じって、セレッソ大阪堺レディースへの声援もとどろき、チームカラーのピンクが広がっている一角も多かった印象です。セレッソ大阪堺レディースが地道に努力し、多くのサポーターに愛されてきたチームであることをすぐに察することができました。

 前半開始から、ちふれASエルフェン埼玉の選手達は果敢に攻め込み、ゴール前にボールを運ぶ展開も多くみられました。攻撃的に前へ進んでいた印象ですが、得点することはできず。

 ちふれASエルフェン埼玉の選手で、特に前半から存在感を発揮していたのは、19番の中村ゆしか選手。積極的にボールを触り、攻撃も連携ミスに対するリカバリーも器用に立ち回っていました。

 ボールに触れる機会とゴールチャンスは、ちふれASエルフェン埼玉に多かったものの、セレッソ大阪堺レディースのディフェンスに崩されたり、連携が少しの距離の誤差等で上手くいかなったりする場面も多く、流れの芽が生まれそうになる度に切断される積み重ねで、流れをセレッソ大阪堺レディースに奪われた印象です。

 対するセレッソ大阪堺レディースは、選手同士で掛け合う声のボリュームも大きく、パワーがありました。間近で彼女達をみていると、昇格を目指して戦ってきた選手達の強いエネルギーが伝わってくるようでした。

 試合は0-3でセレッソ大阪堺レディースの勝利。トータルスコアは0-4となり、セレッソ大阪堺レディースが1部への昇格を掴みました。

ちふれASエルフェン埼玉の中野里乃キャプテンのあいさつ

 試合終了後、ちふれASエルフェン埼玉のキャプテン、中野里乃選手からサポーターや関係者に向けた挨拶がありました。

 「皆様、ここまで足を運んでくださり、たくさんの応援、本当にありがとうございました。正直、勝ちたかったです。こんなにたくさんの方々が集まり、応援してくださったこと。自分達は試合で勝つことで恩返しできると思っていました。自分達の力不足でこのような結果になってしまい、本当に申し訳ございません。こうして私達が大好きなサッカーをすることができるのは、皆様のおかげです。だからこそ、今日勝ちたかったです。ここにいる全ての選手が、それを胸張って言い切れます。今回、このような最悪な結果になってしまい本当に申し訳ございません。私はこのチームが素直に好きです。チームスタッフ、監督、全ての皆様がいたから、自分がいると思います。来年もエルフェン埼玉を応援してください。必ず1年で1部に復帰できるように頑張っていきますので、どうぞこれからも応援よろしくお願いします。本日はありがとうございました」

 涙を流し、声を震わせてところどころ言葉に詰まっていた中野選手の挨拶中、サポーターからの励ましの声援が響く場面もありました。

来シーズンのちふれASエルフェン埼玉に期待!

 2部への降格となった、ちふれASエルフェン埼玉。来シーズンは、1部へ返り咲くという決意を胸にした選手達の活躍に期待したいです。

 勝敗を競って戦っている以上、横並びはありません。現在1部リーグに所属しているから、1部の中で結果を争っていればいいというわけではなく、勝てなければどのチームにも降格の可能性が付いて回ります。なでしこリーグは女性選手達のきめ細やかなプレーや雰囲気の温かさといった魅力があるのと同時に、非常に厳しい戦いが繰り広げられています。

 サッカーを愛するものからすると、多くの選手に笑顔でいて欲しいですが、厳しい戦いがあるからこそ手に汗握る瞬間や、感動の瞬間が生まれていくというものではないでしょうか。今回は、ちふれASエルフェン埼玉には残念な結果となりましたが、来シーズンは最後に選手全員の笑顔で幕を閉じる展開を目指して欲しいです。

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