ポゼッションだけじゃない!「シティの強烈カウンター」に隠された3つのポイント

先週末に行われたマンチェスター・シティ対トッテナムとのカード。

試合前は「接戦」も予想されていたが、蓋を開けてみると、ホームのシティが4-1でスパーズを粉砕。プレミアリーグで「無敗街道」をひた走るその勢いを見せ付ける試合展開となった。

そして、この試合で話題となった一つが、70分に鋭いカウンターアタックからケヴィン・デ・ブライネが奪った追加点のシーンだ。

デ・ブライネのゴールシーンは以下の動画より

動画を見たい場合はここをタップ!

さて、このゴールに抱いた感想はどのようなものだっただろうか?

やはり、デ・ブライネの強烈な左足シュートが目を引いたと思うが、今回はシュートに至るまでのプロセスに焦点を当てたい。彼らが披露したこのカウンターアタックに隠された3つの要素に注目し、その「メカニズム」と「凄み」を端的に解説していこう。

ポイント①:切り替えの早さ

マンチェスター・シティはその圧倒的なボールポゼッション能力が評価されるケースが多いが、それと同時に「切り替えの早さ」にも優れている点を忘れてはならない。そして、このゴールはその長所も非常にわかりやすく出た。

このカウンターアタックは、トッテナムの右SBキーラン・トリッピアーのスローインがハリー・ケインに通らず、ルーズボールになるところから始まるのだが、ここで際立ったのがシティの素早いアクション。前述した「切り替えの早さ」であった。

このシーン、ケインは当然ながら懸命にボールを追いかけたのだが、その他のスパーズの選手は「見ているだけ」というプレーヤーが多かった。

とりわけ、スローワーのトリッピアーに至っては全く切り替えが出来ていないことが、この画像からでも見て取れるだろう。

方やシティ側は、ボールに最も近いポジションにいたフェルナンジーニョを筆頭に、その付近にいるイルカイ・ギュンドアンも反応している。

そして、ここで最も注目して欲しいのがボールからはやや遠い位置にいる、ガブリエウ・ジェズスとルロイ・サネの二人の「思い切り」である。

通常ルーズボールに対しては「攻」にも「守」にも対応できるような動きを取りがちだが、彼らが選んだのは「攻」の一択だった。

おそらく、「フェルナンジーニョがボールを確実に奪う」という全幅の信頼感が彼らにスイッチを入れたのだろうが、前線の選手がここまで素早く次の動きを行えば、当然カウンターアタックの切れ味が増すことは言うまでもない。

カウンターアタックの成功率が高いチームというのは、総じて、ボールを奪う前に前線が動き出しているものであるが、シティはその代表的なチームの一つでもある。

ポイント②:自然に行う「ブロックプレー」

「ブロックプレー」というのは、端的に言えば、相手選手の進路を妨げるプレーにある。

だが、これを露骨にやってしまうと、反則行為と見なされることが多い。「相手競技者の進行を妨げる」ことはルール上認められていないからだ。

それ故に、サッカーではそれを「いかに自然にやるか」がキーになってくるのだが、そういう意味では、このシーンにおける「ブロックプレー」は秀逸であった。

フェルナンジーニョから縦パスを受けたガブリエウ・ジェズスはドリブルを行うのだが、少しボールが足から離れ、ラヒーム・スターリングがカバー。さらに、スターリングもボール処理を少し誤るのだが…彼がここで次に選択したプレーがスパーズMFムサ・デンベレに対する「ブロックプレー」であった。

デンベレは、縦パスが入ったタイミングでかなり距離を詰めていたのだが、このスターリングのプレーの影響でボール奪取する機会を損失。最終的にジェズスはボールを収めることに成功し、ギュンドアンへ展開。その後のカウンターアタックを円滑に進められたのである。

この「ブロックプレー」が、狙ったものであったのか、偶然だったのかはわからない。だが、このプレーがなければ、おそらく、デンベレがジェズスに対してタックルは仕掛けられた可能性は高かっただろう。

そして、攻撃スピードの低下、さらにはカウンターアタックの失敗へと発展していたことも考えられる。

地味なワンプレーかもしれないだが、スターリングがさり気なく行ったこのプレーは大きなアシストであった。

ポイント③:フィニッシュに人数をかける

このゴールはドリブルで持ち込んだデ・ブライネの強烈なシュートで「仕上がる」わけだが、個人的に目を引いたのはその前のシーンにあった。

下記の画像はドリブルが始まる前のワンシーンである。

ギュンドアンからパスを受けたデ・ブライネがペナルティエリアに侵入する直前を切り取ったものだが、フィニッシュの局面でボールを持った選手だけではなく、きっちりと周囲もゴールに向かってランニングしている点がはっきりとわかるはずだ。

また、デ・ブライネから離れるように中央に入ってきたサネの動きは相手守備陣からすると厄介なもので、デ・ブライネに最も近いポジションを取れていたDFエリック・ダイアーはこのサネのポジショニングで悩まされたことだろう。

実際、ダイアーはシュートブロックのシーンでデ・ブライネとの距離をしっかりと詰めることができなかったが、これは最後の最後まで「サネとデ・ブライネの両方を見る」必要に迫られていたためだ。

さて、少し話がずれてしまったが、「フィニッシュに人数をかける」ということは簡単そうで意外と難しいものだ。

しかし、このようにきっちりとそれを実行することにより、ゴールの決定率は格段に上がる。

「ボール保持者に選択肢を増やすこと」だけではなく、「セカンドボールの回収」や「GKに弾かれたボールの押し込み」なども行いやすくさせる作用があり、最終的に強いシュートを放てる(理想的にはゴールで終える)可能性も高まるという寸法だ。

また、カウンターアタックを行う際に、最も防止したいことは「途中でボールを奪い返されての逆カウンターアタック」である。

しかし言わずもがな、「きっちりとシュートで終える」、「こぼれ球につめる、セカンドボールを拾うポジションを取る」ことが実行できている限りは、逆カウンターに遭遇することはない。

「単純だが極めて重要な約束事をピッチにいる選手が忠実に守る」

彼らがこれほどの勝利を重ねられる理由の一つがここにもあるかもしれない。

© 株式会社ファッションニュース通信社