599回目

 「きょうは今年最後だから終わったら恒例の忘年会です」。取りまとめ役の宮野由美子さんが教えてくれた。寒い日だ。やっぱり鍋かな、いや、おでんも捨てがたい…と、湯気を囲んで集う人々の顔を勝手に想像した▲昨日の参加者は30代から80代まで19人。「平和」に近づくために、「平和」が遠くに行かないように-と月に一度集まり、しっかりと前を向いて歩く。佐世保市の「19日佐世保市民の会」▲「長続きの理由ですか…黙って歩くだけで、参加する人の負担が少ないからですかねえ」「結婚や転勤で佐世保を離れていた時期があって、私もずっと参加できてたわけじゃないんです」。去る人は追わず、来る人は拒まずに守られてきた平和への灯。小さくて、でも確かな灯だ▲拡声器もシュプレヒコールもないデモ行進だが、のぼりやプラカードでの意見表明は自由。皆が“同じ”である必要はないけど、意思表示の場は必要だから、と宮野さん▲取材の途中で生年月日を尋ねて「へえ、やっぱり19日なんですね」と思わず声が出た。すると「最初に歩いた日が、ちょうど二十歳の誕生日だったんです」。市民の会が生まれたのは、警官隊と学生の市街戦が語り継がれる「エンプラ事件」の翌月▲宮野さんは今69歳。静かな行進は昨日で599回になった。(智)

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