損してるかも…なぜか人間関係がうまくいかない人

仕事はとってもできるのに、コミュニケーションがなぜかうまくいかない人っていますよね。悪い人ではないのに、とっても損をしているようです。

A課長は、部下をやる気にさせて伸ばす人格者として社内でも評判でした。Aさんも、コミュニケーションには自信があったようです。

そんなA課長のところに、新入社員のB君が配属されてきました。B君がミスをした時には、A課長はやさしく「がんばればすぐにできるようになるよ」「誰にでも失敗することはあるものなんだ」と励ましました。

ところが、B君は「いいんです。僕の能力はこんなもんですから」と一向にやる気を出さず、同じようなミスを繰り返します。根気よく励ましていたA課長も、ついには堪忍袋の緒が切れて「俺がこれだけ君のためを思って言ってやっているのに、どうしてがんばろうとしないのかね!?」と怒ってしまいました。

それから2人の間はギクシャクして、とうとうB君は退職届を提出してしまったのです。

そのコミュニケーションの目的は何だったのか?

A課長の目的は何だったのでしょう? 目的を尋ねると、A課長は「B君に仕事の厳しさと、それを乗り越える楽しさを知ってもらうため」と答えてくれました。

さらには、「なぜ知ってもらいたいのかというと、失敗を乗り越えた後の成功は、ものすごい達成感じゃないですか! あれをBにも味わわせたかったんですよ!」と握りこぶしを振りながら熱く語ります。「なぜ、達成感を味わってもらいたかったのですか?」と聞いてみたところ、A課長からは「人が努力して達成する様子を見るのが好きなんです」という答えが返ってきました。

つまり、A課長はB君にも自分と同じ価値観があるという前提で行動させようとしていたのです。ひとりよがりの考えを押し付けるコミュニケーションであるにもかかわらず、相手に「君の為に」と押し付けていたので、当然のようにB君に抵抗が起き、関係がギクシャクしてしまったのです。

A課長は、B君が仕事に求めるもの、生きがいや価値観、大切にしていることを聞く必要があったのです。

そのコミュニケーションで何をしたいのか?

「人間関係がうまくいかない」「上手にコミュニケーションが取れない」こんな声をよく聞きます。逆上がりができなくても生活に支障はないし、高等数学が理解できなくても生きてはいけます。ですが、コミュニケーションとなると話は別です。

人が一人で生きていけない以上、誰でも周りの人たちとより良いコミュニケーションを求めるのは、人として永遠のテーマかもしれません。コミュニケーションには相手が必要です。そして、自分自身もその中に含まれているのです。自分が何か問題を抱えているときや、「自分はどうしたいのだろうか」と自問自答するとき、自分の内面とコミュニケーションを取っているのです。

やる気のない部下に対して「とにかくがんばれよ」と言う事がいいコミュニケーションとは限りません。「君は、本当はどうしたいんだ」「どうなりたいのか」と問いかける必要があるのです。

聞く技術、つまり相手の深いところを的確に受信する事が大切だと申し上げましたが、人間関係は双方向のコミュニケーションです。

求めるものを正確に伝える技術

ある職場での会話です。

C部長「君、昨日○○社に行ったんだったよね」

D君 「はい」

C部長 「で?」

D君 「は?」

C部長 「(イライラしながら)だから、○○社に行ったんだろう? どうだったんだって聞いてるんだ」 

D君 「ああ、○○社は新しいビルに移っていてきれいでしたよ」

この後、D君はものすごく怒られてしまいました。

空気を読まない応対をしたD君もD君ですが、この場合、本当に責められるべきはC部長の方かもしれません。日本には昔から、言わなくてもわかっているだろうという「察する伝統」というものがあります。

しかし、それは阿吽(あうん)の呼吸が読めるほどのしっかりとした信頼関係があればこその話で、日ごろから質の高いコミュニケーションを取る絶え間ない努力が無いのでは、ただの甘えとなってしまいます。

それでは、この場合はどうすればよかったのかというと、上司が目的をハッキリとして質問をすればよかったのです。「昨日○○社に行ったんだよね。担当者の反応はどうだったのか知りたいんだ」と聞けば、D君はすぐに担当者について詳しく報告できたでしょう。

他にもあるある! ミスコミュニケーション

「明日までにアレやっておいてね」と先輩に言われて、「はい、わかりました」と答えたものの、先輩の言っている「アレ」とあなたが思っている「アレ」が違うことがあります。

翌日、「違うよ、これじゃないよ。アレだよアレ! もう間に合わないじゃないか!」と怒られても、もう後の祭り。あなたはポカンとするばかりで、どうしようもありません。

先輩は「朝イチの会議で使う資料を揃えておいてね」と目的をはっきりと伝えるべきですし、あなたも「アレとは午後から訪問するE社に出す資料の事でいいですか?」と確認すれば間違いは防げたはずです。

他にも「ちゃんとやっておいてね」と仕事を任された場合も、双方の「ちゃんと」が完全に一致していないと、勝手な解釈で処理されてしまう事になります。どうやったら「ちゃんとできた」ことになるのか、事前に認識の共有が必要になります。

常に自分の目的は、今確実に伝わっているのかを意識することが大切です。小さなミスコミュニケーションが積み重なると、大きな問題につながります。普段からの目的の確認が大切なのです。

(文:君塚 由佳)

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