日立金属とネオマテリアル、モバイル機器用シャーシ材で新クラッド材の量産開始 芯材に銅、表層にステンレス、放熱性と強度両立

 日立金属と日立金属ネオマテリアルは20日、ステンレスと銅を組み合わせることにより高強度と高熱伝導率を両立したクラッド材を開発し、日立金属ネオマテリアルの本社・吹田工場(大阪府吹田市)で本格量産を開始したと発表した。スマートフォンなどモバイル機器のシャーシ材として拡販する。熱伝導率に優れる銅を芯材、機械的強度に優れるステンレスを表層材に用いた三層クラッド材で、従来のシャーシ材に比べて熱伝導率はステンレスの10倍以上、機械的強度はアルミ合金の約2倍と高い。

 日立金属ネオマテリアルは極薄板・箔クラッド材の世界大手。電子材、電池材を中心に幅広い分野にクラッド材など特殊金属製品を供給しているが、モバイル機器の構造部材であるシャーシ材として供給するのは初めて。開発品はステンレス/銅/ステンレスの三層構造で2014年10月に開発完了し、サンプル出荷などを行っていた。

 スマートフォンやタブレットなどモバイル機器で高性能化や薄型・軽量化が進み、CPUなど電子回路の半導体素子から大量の熱が発生している。このためモバイル機器のシャーシ材には組立構造を維持する機械的強度と、半導体素子から発生する熱を拡散させ、局部的に高温になることを抑制する放熱性への要求が高まっている。

 ホットスポット(局部的温度上昇)の温度は、ステンレス単体に高熱伝導率のグラファイトシートを貼り付けた部材よりも、開発品の方が低い温度に抑えられる。同社の熱解析シミュレーション結果によると、ホットスポットの温度はステンレス単体で115度、ステンレスにグラファイトシートを貼付した部材で53・8度だったのに対し、開発品は48・3度に抑制できる。

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