通信機器メーカーの中国HUAWEIが描くドローン戦略 スマートフォンの世界シェア第三位の通信機器メーカーの中国HUAWEI(ファーウェイ)は、2017年11月にロンドンで開催したプライベートフォーラムの資料を公開し、5G時代を見据えた10大用途の中にコネクテッド ドローンが重要だと提言した。

5G通信で重要視される10大用途とドローン戦略プログラム

5G時代の10大用途を発表するHuawei Carrier BGのRyan Ding社長

 5Gと呼ばれる次世代通信が本格的な普及を迎えるようになると、HUAWEIでは以下の10項目が重要な用途になると発表している。

1.クラウド仮想AR
2.コネクテッド カー
3.スマート製造業
4.コネクテッド エナジー
5.ワイヤレス ヘルス
6.ワイヤレス ホームエンターテイメント
7.コネクテッド ドローン
8.ソーシャルネットワーク
9.パーソナルAIアシスタント
10.スマートシティ

 さらに同社では、Digital Sky Program(デジタル スカイ プログラム)というドローン戦略を発表している。同戦略では、発展の段階を3つに分けて、戦略ビジョンを表明している。

Digial Sky 1.0
2017〜18年にかけて、遠隔制御と安全な飛行を目指す。飛行制御の目標は、農業や施設警備などで10mを、電源設備やインフラ点検では50mになる。

Digital Sky 2.0
2019〜20年にかけては、目視外飛行とHD動画配信を目指す。警備や物流のために100mを、専門的な調査では150mの遠隔制御が目標になる。

Digital Sky 3.0
2020年以降は、クラウドと連携したインテリジェンスサービスや完全な自動飛行を目指す。500mを越える空飛ぶタクシーやトランク級の物流の実現を目標としている。

レポートの中で説明されている10大用途

デジタル スカイ プログラムに向けた4つの提言

デジタル スカイ プログラムの内容

 HUAWEIが公開したレポートによれば、デジタル スカイ プログラムの実現に向けて、同社が主導するX Labsという技術者によるラウンドテーブルで、4つの提言が発表されている。

・サービスの提供を加速するために、ドローンが目視外で長距離を飛行する状況をリアルタイムでモニタリングできるようにする。

・UTM(UAV飛行管制)規制の導入には、規制当局だけではなく、通信事業者やドローンのプロバイダーなど、産業を超えて策定に参加することが重要になる。

・産業用途や社会課題の解決など、優れたドローンのアプリケーションに焦点をあて、法整備を加速する。

・1000時間を越える安全な飛行試験を実現するために、ドローンのための検証施設や試験航路などの整備が必要になる。

 これらの提言は、すでに産業用ドローンの育成に取り組んでいる先進国では、部分的に実現しつつある。しかし、国によっては実証実験のみに留まっていたり、本格的な通信回線との接続には至らない例もある。特に、目視外での長距離飛行を1000時間を越える長時間に渡って試験できる空路の整備は、国家レベルでも取り組みが遅れている。アフリカやオーストラリアに中国などの大陸で、独自に試験を行っている民間企業がある程度だ。
 これまで、ドローンといえば製造メーカーやサービスを提供するベンチャー企業などが、未来ビジョンを発表していた。それに対して、通信機器メーカーのHUAWEIは、ドローンが都市部を飛び交う社会を想定して、通信という観点から未来のコネクテッドドローン戦略を描いている点が興味深い。
 同社のフォーラムのレポートは、以下のサイトで公開されている。
http://www.huawei.com/minisite/hwmbbf17/en/

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