⑤完 V長崎J1昇格 ぶれずに進化 悲願達成

 11月、サッカーJ2のV・ファーレン長崎がホーム最終戦でJ1自動昇格を決めた。J1などで華々しく活躍した選手がいたわけではない。一丸となってハードワークを進化させ、元日本代表などを擁するビッグクラブを次々と退けた。その成功ストーリーは多くの県民、全国のサッカーファンの心をつかんだ。

 今季は、過去最低の15位だった昨季から17人が入れ替わった。開幕前後は運営会社の経営危機、4月にはジャパネットホールディングス(佐世保市)による子会社化、終盤は強豪とのし烈な昇格争いと、平常心を保つのが難しい局面が何度もあった。

 どんな時も、選手たちが口にしていたのは「目の前の試合、目の前のプレーに全力で取り組む」(GK増田)「自分たちはチャレンジャー」(MF飯尾)といった言葉。その信念は決してぶれなかった。

 開幕戦は新戦力のMF島田、FWファンマ、DF乾、MF澤田のゴールラッシュ。得点力不足に泣いた昨季とは明らかに違った。シーズン序盤に失点が目立った守備陣は増田、DF高杉らを軸に修正。攻守が安定してくると、高木監督は新たな戦術を試し、チームはさらに成長を遂げた。

 リーグ後半戦は、前半戦に敗れた愛媛、松本、福岡、徳島、千葉に雪辱。昇格争いのライバル名古屋には、終了間際の劇的ゴールで追い付いた。シーズンが終わってみると、対戦する全21チームから勝ち点を奪い、最終節までの13試合は負けなし。結果的に白星の数は、優勝した湘南と同じ24。総得点はクラブ記録の59、勝ち点は80に達していた。

 現在、国内最高峰リーグ参戦に向け、昇格の立役者たちの契約更新が続々と決まっている。「県出身選手を増やす」との方針もあり、国見高出身で元日本代表DF、徳永を獲得。大卒ルーキー3人の加入も発表され、新たなチームづくりは着々と進んでいる。それでも、来季は厳しい戦いになるだろう。

 J1昇格が決まった日、スタジアムにはV長崎史上最多の2万2407人が来場し、大きな感動と興奮を分かち合った。だが、それは始まりにすぎない。J1元年の来季こそ、みんなで熱く盛り上げていきたい。それが、県民の生きがいづくり、活力あるまちづくりにつながれば最高だ。

J1昇格を決めた11月11日のホーム最終戦。先制ゴールを挙げて喜ぶV長崎のDF乾(右から2人目)ら=諫早市、トランスコスモススタジアム長崎

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