スト濃厚

 「出生数過去最少」の記事にため息をつきつつ、それでもこの冬、初めて海を渡る赤ちゃんのことを考える。その日を指折り数えながら支度に余念のない島のおじいちゃん、おばあちゃんのことも▲年の瀬の離島便は、懐かしいふるさとへの思いや家族の絆やたくさんの笑顔を乗せて走る。出口の見えないにらみ合いを続けるのは、ほかでもない、そのことを誰よりも知るはずの人々でもある▲「労使紛争」-文字にすればたった4字でも、複雑な経過があり、それぞれに譲れぬ主張があるのだろう。そこへ口を挟むつもりはさらさらないが…。「全面スト不可避」の観測が日ごとに強まる九州商船の離島航路。“決行”ならあすの始発から島の足が止まる▲刻限はじりじりと迫る。解決に向けた努力が続いていると信じよう。もしも事態が急転してストが回避できたら、あれれ、何だか的外れ、となりそうなこの原稿。それでもいいから、と画面に向かっている▲「チキンレース」という言葉がある。相手より先にはブレーキを踏むものか-と意地を張り合う危険な度胸試し。でも、今宵(こよい)はクリスマスイブ、チキンは食卓の上がお似合い▲妙案はサンタのそりには載っていない。胸の内にある社会的使命の重さをいま一度見つめ直してほしい、と願うばかりである。(智)

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