⑦衆院選 野党、自民の独占阻む

 激動の衆院選だった。9月25日、「国難突破」を大義名分に安倍晋三首相が唐突に解散を表明すると、小池百合子東京都知事が狙い澄ましたように新党「希望の党」を設立。野党第1党だった民進党は公認候補全員を希望に移す“捨て身戦法”で挑んだ。当初躍進が予想されたが、候補者を選別する小池氏の「排除」発言などで失速。民進は立憲民主党や無所属にも分裂し、結果として自民党が圧勝した。

 長崎県内も自民が3議席を守ったが、長崎1区だけは、民進から希望に移った新人、西岡秀子氏(53)に敗北。自民の4小選挙区独占状態は崩れた。

 その冨岡勉氏(69)は比例復活したものの、1万票以上、西岡氏に水をあけられた投票結果が陣営に少なからず衝撃を与えた。長崎市内で4日あった反省会。医師不足解消や藻場再生への奔走ぶりが評価されながらも、支持団体幹部は「いまだ実績がよく知られていない」と問題視。当の冨岡氏は次回に雪辱を期すが、地元での活動の少なさや県市議を含めた組織力の弱さという課題は残ったままだ。

 西岡氏も結果を楽観していない。開票日の夜、「当選確実」に沸く選挙事務所で、周囲に促されても万歳をしなかった。支援者から「クール過ぎる」との苦言もあったが、西岡氏は「そんな気持ちにはなれなかった」と打ち明ける。

 当選後、同じく万歳を拒んだ国会議員に2人会ったという。共通点は野党、新人、そして女性-。与党の強引な政権運営に対し、野党も存在感を発揮しきれない状況で、これらの要素が有権者の共感を得たと考えている。「1強政治」に歯止めをかけ、少数者や弱者の声を国政に届ける議席。「責任を重く受け止めなくてはならない」。長崎県で初めて三権の長まで上り詰め、亡くなった父武夫氏の背中を追い掛ける。

 西岡氏を支えた民進も、手放しで喜ぶ余裕はなかった。結果を残せず、前原誠司氏が党代表を引責辞任。後を大塚耕平氏が継いだが再生議論はまとまらず、解党含みの混乱が続いている。

 西岡氏にバトンタッチし国会を離れた高木義明元文科相(72)は今も県連代表を続け、「野党が政局に明け暮れている現状に、じくじたる思いがある」と嘆く。ある党市議は「2019年には統一地方選があるのに、自分たちはどうなるのか」と焦りを隠さない。

 地方組織を持たない希望と、長崎県内の所属国会議員がいなくなった民進にとって、互いの連携は必要不可欠。西岡氏は「民進県連とは一体の気持ちでいる」、県連の渡辺敏勝幹事長も「希望とは“兄弟党”としてやっていく」としている。だが、中央の政局は流動的で先行きは見通せず、間近に迫った知事選でも存在感を示せずにいる。

衆院選長崎1区で激戦を演じた冨岡氏(左)と西岡氏、長崎市の開票所のコラージュ

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