金属行人(12月25日付)

 プロ野球がシーズンオフに入り、横浜市庁舎の目の前にある横浜スタジアムで先月から増築工事が始まっている。すでに所々がフェンスに囲まれ、工事が終わる2020年には観客席が3万5千席へと6千席増える予定だ▼正直、横浜スタジアムの増築など、かつては有り得ない話だった。球団の成績は記録的な低迷が続き、当時のオーナー会社には熱意が感じられない。当然、客席はガラガラ。公式戦の最終日はセレモニーを開くのが通例だが、11年は中日ドラゴンズのリーグ優勝決定と重なったという口実でウグイス嬢に最下位の「おわび」を読み上げさせる始末だった▼12年からオーナーとなったDeNAは新しい企画に次々と挑み来場者を集め、オリジナルフードやクラフトビールの開発で収入を増やした。これが補強費用の積み増しや選手のモチベーションにつながり、成績も向上する好循環を呼んだ。冒頭の増築は、チケットが完売続きというファンの不満に応えたものでもある▼関内駅から徒歩数分という好立地は変わらず、球技でやることは同じ。しかし新興企業のDeNAには結果を出して認められたいという熱意と過去にとらわれない創意工夫があった。同じ環境でも、経営一つで結果は変えられるものである。

© 株式会社鉄鋼新聞社